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日本共産党岡山市議団の田中のぞみです。
会派を代表して、本議会に提案されました34件の議案の内、5件に反対しますが、以下主なものについて討論します。
(戸籍法)
まず、議案第141号令和6年度岡山市一般会計補正予算中、戸籍記載事項追加業務委託費、3億4千万円の債務負担設定についてです。
これは、来年5月に施行予定の改正戸籍法により、戸籍への氏名ふりがな記載が必要となったため、全ての国民が法施行後1年以内に本籍地の自治体にふりがなの届出を行わなければならず、それにかかる通知発送やデータ入力作業を委託するためのものです。
改正戸籍法は、2023年6月2日に成立した「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案」に含まれた22本もの法改定のうちの一つでした。法案全体がマイナンバーカードの利用促進を図るためのものとなっています。
戸籍に「氏名の振り仮名」を記載することは、例えば、フリガナ名義となっている金融機関情報など、マイナンバーカードに紐付ける情報をさらに拡大し利活用を広げる布石とするものです。同法案22本のうち、マイナンバー法及び公的個人認証法の一部改正でも、マイナンバーカード及び署名用電子証明書に「氏名の振り仮名」の記載・記録が定められており、「官民問わず様々なサービスにおいて本人確認事項として利用することが可能になる」ことが説明されています。だから戸籍にもフリガナ記載が必要となるわけです。
さらに、今回の戸籍法の改定では、1年以内にフリガナの届出がなかった場合には、自治体が職権でフリガナを決めて戸籍に記載してしまう事になっており、これはあまりにも強引で、個人のアイデンティティを侵害する事だと指摘します。
加えて今後生まれてくる子どもの名前は「一般に認められている読み方」に限定されました。これは、政府の法制審議会の部会でも、幅広い名前を許容してきた日本の命名文化を重んじる観点から、「国が私的な領域に踏み込むことには謙抑(けんよく)的な姿勢を示すことが望まれる」などの意見も出されています。親の思いが尊重されるべき命名権を侵害する危険があります。
昨今のキラキラネーム対策ともされますが、氏名の漢字については、名字も名前も一般的な読み方でない呼び名は、歴史上の人物でも散見され、我が国の文化でもありました。東京大学日本語学の名誉教授 野村剛史(たかし)氏は、「漢字に対して多種多様な読み方があるのが日本語。無理に統一しようとすれば文化の破壊になる。」と指摘します。もともとの和語、日本語に対し、後から輸入されたのが漢字です。古代日本では名前の表記にはこだわらなかったとされています。柔らかい音、響きを大切にしてきた文化でもあり、ぴったりの漢字がない場合もあれば、ニュアンスで字画の良い漢字を充ててきた場合がある、と言うことだと思います。
自治体の窓口業務も、今後、国のQAが示されるとは言え、到底カバーしきれませんから、あちらの自治体では認められた読み方がコチラでは認められない等、どこまで認めるのか、誠実に対応しようとするほど窓口業務の負担が煩雑に膨大になる懸念があります。
先述の野村氏は、「これまで戸籍にフリガナがなくても全く問題はなかった」「国は国民を一元管理したいのかもしれないが、必要性を感じられない法改正だ」と述べています。
そもそもマイナンバー制度は、プライバシー侵害のリスクが避けられないものであり、それゆえ制度発足以来、社会保障、税、災害対策の三分野に限定して使用し、利用する事務・情報連携も法律で規定し、マイナンバーを含む個人情報の収集・保管は、本人同意があっても禁止してきました。
今回の法改定では、これを大転換し、マイナンバー利用の限定を外して、全ての行政分野において利用を推進し、マイナンバーの情報連携も法改正なしに拡大することが可能となりました。
こうしてマイナンバーに一元化されつつある個人情報の山は、昨年から、匿名加工すれば、企業や団体の求めに応じて提供できるようになっています。
今回の戸籍法改定も、名古屋大法学部教授の稲葉一将(かずまさ)氏は、「誰のための改定なのか」と指摘します。国民の利便性というよりは、マイナンバーカードの利用拡大、普及のためである事は明白であり、個人の最も大切な氏名のあり方まで制限をするような、この度の関連業務予算については認められません。
(マイナ保険証)
甲第142号議案 岡山市国民健康保険条例の一部を改正する条例の制定について
甲第143号議案 岡山市子ども医療費給付条例等の一部を改正する条例の制定について
甲第151号議案 岡山市後期高齢者医療広域連合規約の変更について
です。
これらはいずれも、12月2日から紙の被保険者証を廃止しマイナバーカード保険証に統一しようとする事にともなう条例改正です。岡山市におけるマイナ保険証の取得割合と実際に利用している割合は、国保で取得率59.41%、利用率13.71%、後期高齢者医療制度で取得率55.94%、利用率9.59%です。半分近くがまだ取得すらできていない状況で、紙の保険証の廃止を急ぐ理由はどこにもありません。1割程度という利用率を見ても、国民自身が便利だと感じていないと言う証拠です。実際に、自民党総裁選でも、紙の保険証廃止の延期が争点の一つとなっているわけで「不安の声が大きいのであれば、紙の保険証との併用は当然」とのコメントがあります。
今後、医療機関の窓口も混乱が増すと想定されています。12月以降も1年間は有効とされる紙の保険証や今後導入が予定されるスマホに搭載したマイナ保険証、次期マイナカードを入れると医療機関の窓口で、資格確認に用いるカード等の種類が9種類にもなるそうです。マイナ保険証だけでも従来型、顔認証型、スマホ搭載型、新型と4種類となる予定で、医療機関窓口の読み取り機器が対応できるとは限りません。さらにマイナンバーカードの有効期限には2種類あり、カード自体の10年と電子証明書の5年のうち、どちらが切れていても保険証としては使えません。有効期限は、カードに記載は無いため、本人も気づかない有効期限切れによるトラブルが今も報告され続けており、今後は一気に増えることが懸念されています。
私たちは、保険診療のデジタル化を否定するものではありません。既に診療情報や投薬情報はレセプトやカルテとしてデータ化されています。スマホ保険証など新しい技術で登場してデータ共有できるようにすることと、マイナンバーの個人番号に医療データを結びつける事は別物です。マイナンバーを通じて個人の医療情報も他の個人情報も一元化しようとする点に賛成できません。
改めて、このマイナ保険証への統一については、移行を急ぐがあまり、技術的なトラブル続出に見られる制度設計の不十分さが明らかにもかかわらず、普及率も利用率も上がらないまま強引に紙の保険証を廃止しようとする事が、自治体業務も医療機関窓口業務も複雑化させ、不要なトラブルを招くと指摘し、関連条例改正案に反対します。
以上、議員各位の賛同を求めまして、討論とします。