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日本共産党市議団の田中のぞみです。会派を代表して、本議会に上程されました64件の議案のうち11件について、委員長報告に反対の立場で討論します。
(反対した議案)
甲第177号 令和7年度岡山市一般会計予算(第4号)について
甲第180号 岡山市指定通所支援の事業等の人員,設備及び運営に関する基準等を定める条例の一部を改正する条例の制定について
甲第181号 岡山市指定障害児入所施設等の人員,設備及び運営に関する基準等を定める条例の一部を改正する条例の制定について
甲第183号 岡山市一時保護施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例の制定について
甲第184号 児童福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係条例の整理に関する条例の制定について
甲第185号 岡山市児童福祉施設の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例の制定について
甲第186号 岡山市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例の制定について
甲第191号 岡山市立学校給食センター条例の一部を改正する条例の制定について
甲第226号 工事請負契約の締結について
甲第227号 工事請負契約の締結について
甲第228号 工事請負契約の締結について
<新アリーナ>
まず、新アリーナ建設についてです。
甲第177号令和7年度岡山市一般会計補正予算には、計画地の測量、地質調査費など合計で1億2,680万円の事業費と寄付金の基金積み立て2億5,000万円の予算が計上され、事実上の事業化決定となります。
新アリーナ建設については、これまで様々な議論がありました。
推進する方々は、市民の理解は進んでいないとしつつも、岡山のまちづくりに必要な施設、賑わい創出には無くてはならない、金額に表せないわくわく感や岡山への愛着の醸成、あってしかるべき、と繰り返されます。なんと上から目線、トップダウンの政策押しつけなのかとの声を聞きます。
経済界やスポーツ界の一部で盛り上がり、あまりに市民不在の議論がなされ、突き進んでいると感じます。市長選で示されたように、これほど市民の意見が二分している、理解が進んでいないと認識していながら、広く市民の意見は聞いていません。先に事業化を決定し、さあ、みなさん理解してください、というのでは、これが健全な地方自治のあり方なのか、と思います。
財源となる国税や市税は、市民のみなさんの大切な税金です。その使い方として、本来市民の実態や要求を広く聞くべきです。
地方自治法第1条では、地方公共団体は「住民の福祉の増進を図ること」が基本と定められています。 住民の福祉、幸せとは何か。誰もが健康で文化的な生活を送れるよう、医療、福祉、教育、ゴミ処理、消防といった最も身近な住民サービスを充実させることと位置づけられているわけです。
アリーナより暮らし支援を、と求めるのは次元が違うと諭そうとするのは、話のすり替え。市民を見下しているの声さえ感じます。なぜなら市民にとって、市のお財布は一つなわけだから、物価高騰の中で、子育てをしながら、介護をしながら、もしくは老いゆく自身の将来に不安を抱きながら、日々を乗り越えている人々にとって、あのきらびやかなコンサート主体の、営利施設をなぜ公立でつくらなければならないのか、という事が納得できないわけです。新アリーナの動画を見れば見るほど、その思いは強くなる。アリーナに行ったことがないから、見たことがないから、理解されないと決めつけるべきではありません。今盛り上がっているサッカースタジアムとは違い、誰がこれを求めているのかすら、分からない。
新アリーナをつくることで市の他の事業が後退しない、というのは当たり前のことです。しかし、当然、影響がないわけではありません。そもそも、今の市の福祉制度や暮らし支援が不十分だと思っている多くの人々にとって、今、優先するべき事は他にある。と言っていることもまた、当然だと思います。市民の切実で素朴な願いを、「違う事業だから比べるべきではない」と片付けるのは、失礼だと思います。年間3.4億円あれば当然、拡充できる事業はあるわけです。
この間、市の大型事業は、市庁舎、市民会館、市民病院など、ほとんどが老朽化施設の建替えか、需要予測に対応するためでした。全国のアリーナラッシュを見ても、公立アリーナは、既存の県立体育館や市立体育館の建替えであることがほとんどです。
岡山市の新アリーナは、全く新規で、単体で公立施設として建設しようとすることに大きな特徴があります。そして、その運営権をまるごと民間に投げてしまう。今後、30年、50年後を思えば、不安しかありません。
以下、反対理由を5点述べます。
① まず、あまりに経済界いいなり、優遇する点です。
この新アリーナ構想は市民からの要望というより経済団体からの要望で始まりました。2021年12月の公設民営でのアリーナ建設要望が出てすぐ、市は、基本調査を実施し5,000席規模81億円の案を出します。その直後に、機能充実の要望書が出されば、市は基本計画を策定し5,000席145億円に拡大させます。さらに採算を取るために規模拡大を要望され、現在の最大1万席280億円に膨れ上がりました。これを経済界言いなりと言わずして何というのでしょうか。
寄付集めにしても、50億円という額を設定したのは市であり、それでも事業費のわずか18%です。内諾を得られた寄付のうち、単独分は市が47件に対して、経済界13件、プロスポーツチームに至っては0件です。挙げ句、寄付を集めたらその1割を手数料として税金でキックバックするとのこと。50億円の寄付を集めるのに、5億円の手数料が別途発生するという計算になります。
どこまで優遇するのでしょう。「民にできることは民に」が市の常套文句ではなかったでしょうか。
②第二に、その事業目的が営利目的になりつつあることです。
もともとはトップリーグのレギュレーションを満たす施設がない、プロスポーツチームの市外転出を抑制するためとのことでした。全国的には、既存の体育館施設に、大型モニターや照明を設置し席数を増やし、VIPルームを追加する大規模改修で対応しているところもあります。たとえば県のシゲト-アリーナの可能性について、県と協議したのかと質問しても、していないとの答弁です。これでは市民は納得しません。市民利用の体育館が足りないなら、別の方法があります。そもそも、2015年策定の岡山市スポ-ツ施設整備計画では、体育館の新設はしない。と明記されていました。市の財産管理計画でも、市有施設の床面積を減らす大方針があります。自らの方針をもねじ曲げ、県との事前協議もないまま突如進み出した事業なのです。
いまや、その整備目的は、岡山の賑わい創出に変わり、利用料収益の9割以上をスポーツ観戦以外で稼ぐ施設が想定されています。まさに営利施設です。今後20年間の市の試算ではプロスポーツ観戦の動員数は2,000人と見積もっています。いずれのプロスポーツチームも年間の平均動員数が1,000人前後の現状からみても、1万席のアリーナはあまりに大きすぎるのです。営利目的のコンサートアリーナは公立でつくる必要はありません。
③第三に、採算制についてです
地図で見ておわかりの通り、岡山ドームより小さな新アリーナです。ここに急傾斜の観客席が地上6階7階と縦におおきなアリーナとなるでしょう。
メインアリーナの賃料は一日180万円。土間なので、設営に前日が必要なため2日間で360万円。コンサートは4日間貸し切りで1,400万円、プロスポーツは現在と同等の約200万円程度で、試算しても、年間の運営費経費4.3億円には届きません。市民割引など設定される余地はありません。
BT+コンセッション方式で、運営権はすべて民間に受け渡します。サブアリーナでさえ、市民利用が確保される確証はありません。利益を上げるために、犠牲になるのは公共性です。
高松、広島、神戸、姫路、吹田に大アリーナが次々オープンしています。ホテルや複合施設と一体的なアリーナ群です。競争が激化する中にあって、新アリーナに期待を寄せる市民団体、有識者でさえ、岡山の新アリーナは単体で採算を取るのは難しいと明言されました。
新アリーナ周辺地がどれほど賑わおうと、ここを会場と選ぶのはあくまでプロモーターです。岡山にはポテンシャルがあるといいながらも、会場や会場周辺、搬入口含め、使い勝手がよくなければ、興行のリピーターにはなりません。会場持ち回りのプロスポーツとは違います。市としてどんな打開策があるのかと質問しても、事業者まかせの答弁しか返ってきませんでした。公の施設なのに、市としての見通しがありませんでした。
全国で、完全な独立採算制が成り立っているのは今のところ唯一、沖縄アリーナだけです。沖縄アリーナの収益の半分は飲食などの自主事業です。プロバスケチーム「沖縄ゴールデンキングス」の本拠地で、アリーナ運営も担っています。年間平均動員数は約8000人と日本一。アリーナで飲食事業が成り立つのはプロスポーツ観戦の時であり、コンサートではないはずです。30あるスイートルームも年間契約は完売していると聞いています。沖縄アリーナはバスケ人気に支えられているのです。
岡山の新アリーナが第2の沖縄アリーナになれる保障がどこにあるのでしょうか。
20年一括委託を考えているようですが、30年後40年後、市の大きな負の財産になる不安はぬぐえません。
④第四に、事業費の増大です
現在の事業費は、高松、太田、沖縄、佐賀の事例を参考に平米単価で出しているだけであり、海??の学校給食センターが、試算時から2倍に跳ね上がった際、繰り返し答弁されたように、積み上げて計算した事業費ではありません。
さらに、物価高騰により、たとえば新市庁舎はこの3年間で47億円も物価高騰スライドで追加予算がかかり287億円契約が328億円になっています。周辺賑わい創出にさらに100億円をかけた都市もあるとのこと。この事業は、間違いなく400億円近くに膨れることが想定されます。今、市の財政に大きな影響がないと説明しますが、当てにならないと市民は肌感覚で気づいています。
また、岡山ドームとの間の市道を廃止することがいつの間にか決まっていました。昨年2,000万円もかけて1万人規模のアリーナへ拡大した追加調査では、その分厚い報告書の半分以上が、交通調査でした。その直後に、市の独断で真ん中の道を廃止し、奥の立体駐車場への経路が片方なくなることになります。北長瀬市営住宅側からのアクセスが突き当たりとなり、大きな混乱が予想されます。民家も近接しており、近隣には流通センターがあります。あれほど公共交通利用を呼びかけているファジアーノ観戦ですら、周辺の混雑・迷惑駐車は誰もが知るところではないでしょうか。
市道廃止による影響について、データ解析もまだできていないままで、対策が可能とする市の判断の根拠はどこにあるのでしょうか。
⑤最後に、あまりに市民不在な点です。
市長選挙では、間違いなくアリーナ建設は争点でした。積極的にアリーナを支持する投票者数の方が少数だったことは明らかです。
これまで述べてきたように、アリーナの姿が明らかになればなるほど、公立でつくる必要はないとの声が返ってきます。これまで市は、建設是非を問うパブリックコメントや幅広いアンケートなど行ってきませんでした。多くの疑問にも答える機会も作ってこなかったわけです。暗闇の中で意思決定を迫れないという意見もありましたが、意見が二分化している今、事業化を急ぐのではなく、丁寧な合意形成を図るべきです。市民を分断するとして意見を聞かないことは、市民は説得されるべき対象でしかないのでしょうか。
住民自治を基本とする地方自治において、議会も市民の負託を受けて議論する場とは言え、常に市民の生の声を伺い反映させる姿勢を失ってはなりません。
サッカースタジアムの議論が本格化すれば、市がどれほど負担しなければならないかも分からない状況です。多くの市民が望んでいない営利施設に、多額の市民の税金投入する本事業はいったん立ち止まるべきです。
<「地域限定保育士」について>
甲第180号、甲第181号、甲第183号、甲第184号、甲第185号、甲第186号。これらはいずれも、保育士不足を理由に、地域限定保育士の導入が含まれた条例改正です。
地域限定保育士とは、都道府県単位で資格試験を行い、3年間はその地域限定で保育士として働くことができる制度です。特に、音楽・造形・言語の実技試験が免除できることが大きな特徴ですが、その内容は都道府県に任されています。
岡山県が導入する方向であるため、本市において一連の条例制定をおこなうとのことです。しかしながら、県は現段階で具体的な選考内容について一切示していません。どこまでその専門性や適性が保障されるのかも分からない状況において、なおさら賛同できません。
保育士不足の最大の要因は、低い賃金と過酷な労働環境にあります。この待遇改善という根本的課題を先送りし、資格試験を緩和したところで保育士不足が解消するとは思えません。それどころか、全国どこでも通用する国家資格の緩和に他ならず、結果として保育士全体の地位低下を招きかねません。
<建部給食センター廃止について>
甲第191号岡山市立学校給食センター条例の一部を改正する条例の制定について。
これは、建部の学校給食センターを1月1日から廃止するものです。廃止はいつ決定したのでしょうか。議会での議論、市民的な議論は確認できませんでした。
建部の学校給食センターは建部中学校に設置されており、建部中と建部の小学校3校へ配送を行っていました。2021年に耐震化基準を満たしていないことが判明し、補強工事も難しいとして、2024年には取り壊し予算が計上されています。当時の委員会記録では、現地建替えを求めた声にたいし、否定せず、いったん取り壊すとの答弁がなされています。
それがいつのまにか、御津給食センターへの集約が決定しており、この度、廃止条例が上程されています。いつ方針決定したのか、という質問に、実は2023年9月には内部で方針が決まっていたとの答弁がありました。にもかかわらず翌年の委員会で「いったん取り壊す」と曖昧な答弁をしていたことになります。
学校給食調理は、集約すればするほど、そのリスクは高まります。混入物や感染症、委託先の急な撤退などが発生するとたちまち給食がストップしてしまいます。配送時間も長くなり、配送中のトラブルリスクも増えます。
岡山市は現在、小中学校の給食調理場の再整備計画を策定中です。それぞれの調理場をどうしていくかという計画がまさにできあがろうとしているさなか、建部だけ単独で廃止を決定した事にも矛盾を感じます。
このままでは栄養士も1人減ってしまうことになります。
真に地産地消をすすめ、温かい給食をとどけるためにも、自校調理を基本として欲しいと思います。ましてや給食センターの統合には反対します。策定中の再整備計画の中で、再度検討することを求めます。
<認定こども園建設について>
甲第226号、甲第227号、甲第228号の工事請負契約の締結についは、それぞれ、野谷、芳田、福浜の市立の認定こども園園舎を建設するための契約案件です。
園舎が新築されることはありがたいことですが、そもそも、122園あった市立幼稚園・保育園を36の認定こども園に統合する一大プロジェクトの一環であり、賛同はできません。
小学校区単位に市立幼稚園や保育園があることこそ、岡山の大きな特徴であり、小学校との連携が大変スムーズにできていたことは自他共に認めるところではないでしょうか。市内周辺部の集落にとっても重要な地域基盤だったはずです。全国的に見てもめずらしかったこの岡山市の大きな強みを自ら投げ捨てる市立園つぶしには反対です。
保育園の待機児童がゼロになったといいますが、希望園を3園書いても認可園に入園できないこどもは400人以上います。市立園のはたすべき役割は、まだまだあるはずです。
以上、議員各位の賛同を求めまして、討論といたします。