議会質問・ニュース

【原稿】 2020年6月議会 陳情の採択を求める討論(20.06.24竹永みつえ)
[ 06月24日 ]

 

 

6月24日に閉会した2020年6月定例岡山市議会で、日本共産党岡山市議団は核兵器禁止条約の調印・批准を日本政府に求めるよう市議会として意見書を出すことを求める陳情に賛成しました。

竹永みつえ議員が、討論に立ち理由を述べました。

全文は、次の通りです。

【印刷用PDF】2020年06月議会 陳情討論 竹永0624


私は日本共産党岡山市議団を代表して、

陳情第17号 日本政府に核兵器禁止条約の調印・批准を求める意見書の提出について

を不採択にするという委員会報告に反対の立場で討論します。

 

今年は広島と長崎に原子爆弾が投下されて75年です。1945年末までに21万人以上が犠牲になり、生き残った被爆者は、戦後も、身体的な影響と、精神的な苦痛を強いられてきました。

私の母も被爆者です。10歳の時、広島市内中心部で被爆しました。被爆直後は母と両親と3歳の弟の命はなんとか助かりましたが、その4か月後、原爆症をわずらい精神を病んだ母の母、つまり私の祖母にあたる人ですが、首をつって自殺をしてしまいます。その姿を発見したのは、まだ10歳の私の母でした。それから2年後、母の父親も原爆症で亡くなり、弟と2人で親戚の家に預けられて育ちました。その弟も被爆が原因で健康被害があり、大人になって自殺をするという悲惨な出来事が続きました。

たった1発の核兵器が大勢の人の命を奪い、生き残った人にも過酷な人生をもたらしました。そして罪もない家族も壊したのです。母は、「なんで私ばっかりこんな目に合うのか、ピカさえなければと、何度も何度も思いながら何とか生き延びてきた」とよく話していました。「子どもや孫の世代には核も戦争もない社会であるように」とそれだけを祈り続けた母は2011年、77歳で亡くなりました。

私も孫を持ちおばあちゃんになりました。いとおしい孫たちを新たな被爆1世にしないためにも、母たち被爆者の願いや思いをしっかりとつなげ、核兵器のない世界の実現を目指したいと思います。

現在、被爆者の方々の平均年齢は82歳を超え、被爆体験を語り継げる人は少なくなっています。その被爆者たちの長年の運動と思いが実ったのが核兵器禁止条約です。

史上初めて核兵器の全面禁止を定めるこの条約は2017年7月、国連加盟国の6割を超える122か国と地域が賛成し、採択されました。

前文に「ヒバクシャの受け入れがたい苦しみに留意する」と記され、核の非人道性が強調されました。条約は、核兵器について破滅的な結末をもたらす非人道的な兵器であり、国連憲章、国際法、国際人道法、国際人権法に反するものであると断罪して、これに「悪の烙印」を押しました。核兵器は今や不道徳であるだけでなく、歴史上はじめて明文上も違法なものとなりました。また条約には開発、生産、実験、製造、取得、保有、貯蔵、使用とその威嚇に至るまで、核兵器に係るあらゆる活動を禁止し、「抜け穴」を許さないものとなっています。同時に条約は、核を持っている国が条約への参加ができます。核兵器完全廃絶への道すじを示し、ともに実現していくことを示しています。

長年の被爆者たちの願い、訴えが結実した内容で、私たち被爆2世にとっても大きな希望です。全世界の反核平和運動、非同盟諸国などの力と、人類の英知が結集されたこの条約の成立は、多くの人に感動的に受け止められました。

しかし、被爆国である日本は世界に先駆けて、核兵器廃絶へのリーダーシップをとる役割を果たすべきであるにもかかわらず、いまだに批准していません。

核兵器禁止条約への批准が、50か国を超えてから90日を経過した時点で、条約は発効します。6月現在で、署名国81か国、批准している国は38か国になっており、あと12か国が批准すれば発効するところまで来ています。あと一歩です。

また今年は被爆75年であるとともに、核不拡散条約NPT発効から50年。5年に一度の再検討会議が、4月27日から5月22日まで国連本部で開催され、私も被爆2世としてニューヨークに行って一連の行動に参加する予定でした。しかし新型コロナウイルスの感染問題で中止となり、とても残念でした。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は「核兵器の差し迫った危険は、単なる仮定や遠い将来のものではありません。それは現在まぎれもなく存在するものなのです」と述べました。

だからこそ、核兵器を使うこと、持つこと、作ること、実験することなどすべてが違法化される核兵器禁止条約の一刻も早い発効が求められています。

「核保有国と非保有国の分断がさらに深まる」との意見もありますが、抑止力に頼る限り核兵器はなくなりません。核抑止力とは、いざという時は核兵器を使うという宣告に等しいものです。被爆を体験した国が、他国に同じことがおきてもいいと言うこと自体が、反道徳的であり非人道的です。
政府は核保有国と非保有国の橋渡し役を目指すとしますが、被爆国として積極的に核廃絶を目指す熱意を感じ取れません。「アメリカの核の傘のもとでこそ守られる」「核兵器は安全保障にとって必要だ」と批准しない理由を述べているからです。

現在、地球上には1万4千発もの核兵器が存在し、その威力は広島や長崎に使われたものよりはるかに大きく、地球を何度も破壊するだけの威力があると科学者は論じています。

核兵器の使用がどんな惨禍を招くか骨身にしみて理解している日本が、核廃絶の取り組みの先頭に立つ責任があると私は思います。政府には被爆者の声にも耳を傾け、切なる思いを真摯に受け止めていただきたいと思います。

核兵器禁止条約は、一握りの大国が世界政治を思いのままに動かしていた時代は終わり、すべての国々が、対等平等の資格で世界政治の主人公になる新しい時代がひらかれつつあること、市民社会が国際政治の構成員として大きな役割をはたしていることの2つの視点を世界に示した画期的な条約だと言われています。

全国の自治体では核兵器廃絶のため議会決議や動議が採択されています。また岡山市長も参加している平和首長会議には、163か国から7900以上の都市が参加し、核兵器廃絶と安全な都市を求めています。

よって、これまで以上に平和行政を進めるためにも岡山市議会として政府が速やかに禁止条約に調印し、批准することをもとめる意見書を提出するべきだと申し上げて、討論を終わります。

議員各位のご賛同をお願いします。