議会質問・ニュース

【討論原稿】 2020年9月議会 議案 田中のぞみ
[ 09月24日 ]

24日に閉会した2020年9月議会で、日本共産党岡山市議団は全37議案中2議案に反対しました。

市議団を代表して反対理由を述べる討論を行った田中のぞみ議員の討論原稿の全文です。

【印刷用PDF】議案討論 200924 田中

 


日本共産党岡山市議団を代表して、9月定例市議会に上程された34議案のうち以下2議案について、委員長報告に反対の立場で討論します。

甲第142号議案 令和2年度岡山市一般会計補正予算(第4号)について、と

甲第151議案 岡山市の火葬に関する事務の委託について、

の2議案は、瀬戸内市と連携して建設しようとする火葬場について、岡山市が負担する上限として協定書に示されている10億5000万円を債務負担や市債等で計上する予算と、事務の委託に関する規約の議案です。

まず、担当職員におかれましては瀬戸内市との協議を重ね、厳しい交渉をまとめられてきた点には敬意を表したいと思います。

私たちは、火葬場だから反対をするわけではありません。以前から指摘をしてきた過大な炉数計算に基づいた計画は見直すべきだと考えますので、以下理由を述べさせていただきます。
 
岡山市は、火葬数のピークを迎える2040年(H52年)に28炉が必要になると説明を繰り返してきました。東山が14炉、富吉の北斎場が12炉なので、瀬戸内市斎場に岡山市分が2炉必要になるという説明です。しかし本当に、28炉が必要でしょうか。

平成29年2月に策定している「岡山市新斎場整備事業基本構想」では、必要火葬炉数として平成32~平成57年までの試算が示され、最大28炉必要と記されています。試算の初年度は平成32年で、それは令和2年、実は今年度のことです。今年、何炉必要と試算されているかというと、22炉です。ご存じのとおり、令和2年現在、東山斎場の14炉と西大寺斎場の3炉の17炉しかありません。試算根拠となる死亡者数はほぼ想定通りです。

試算との間に5炉も差がありますが、大きな混乱は起きていません。

このことを指摘すると市民産業委員会では、人数制限や車の台数制限をしている、予約を変更せざる得ない場合がある、との答弁がありましたので、東山斎場に確認しました。参列者の人数制限や台数制限は、まだ駐車場が工事中のために行っている制限とのことで、「斎場北側の駐車場整備が完了するまでの間」とパンフレットにもはっきり書いてあります。東山の火葬数については、一日24件、繁忙日30件とされていますが、最も混雑する「年末年始はこの限りではありません」との記載もありました。東山斎場がリニューアルされて最初の年末年始、昨年の12月30日は25件、1月3日22件、4日26件、5日29件、6日23件、で30件を超える日はありません。完全予約制なので、希望の時間に添えない場合はあるでしょうが、混乱はない、とのことです。年末年始の休場日を短縮したとのことですが、お隣玉野市は、もともと正月1日と2日しか休場日はありません。吉備中央町、総社市は1日、2日、3日のみです。
 
なぜ5炉も実態と差があるのでしょうか。やはり、必要炉数計算の方法に問題があるという事になります。

そもそも28炉という数字はいつ出てきたか、というと、平成25年2月28日の本会議答弁が初めてです。それ以前には見つけられません。それどころか、その一年前までは岡山市全体で必要な炉数は24炉とされていた事がわかりました。平成24年1月20日の市民文教委員会で示された資料には「今後の火葬需要としては2040年(平成52年)に火葬件数がピークを迎え、ピーク時に対応するためには、岡山市全体で26炉(内、人体24炉)が必要であると見込まれている。」と記されています。想定される死亡者数も火葬数も稼動日数も、今の試算根拠とほぼ同じです。

では何が違うのか、というと、1炉あたりの一日平均火葬数を2とするか、2.5とするかの違いでした。東山では現在も、火葬が集中する日には一部の炉で一日3回転する運用をしています。平均火葬数2を使う意味は、どんなに忙しい日でも全ての炉で2回転しかさせないという計算です。なぜ、当時も2回と2.5回を比較検討し2.5を採用していたのに、それを2回に変更し必要炉数が28に増やしたのでしょうか。

その答えは、平成25年3月の「岡山市東山斎場再整備の基本計画・基本設計等業務委託報告書」の中にありました。

報告書の「上位計画」という項で、「岡山市の斎場計画は、現在の東山斎場を現地にて建て替えを行い、小規模で老朽化の進んでいる西大寺斎場の解体、岡山市北西部に新斎場を新設することを柱とした2斎場体制による基本構想を検討していたが、ここで瀬戸内市が斎場を新設するという新たな意向を受け岡山市としてはこの新瀬戸内市斎場の利用も加えた実質的には3斎場体制による斎場運営を目指すものとする。」と記載がありました。

それまで岡山市は、西大寺斎場は解体し、東山と北斎場の2か所体制を想定していたが、瀬戸内市が新設するので、3か所体制へと方針転換したわけです。

確かに、瀬戸内市が平成29年2月に策定した「瀬戸内市新火葬場整備基本計画」にも、平成24年度より岡山市と協議を進めている、との記述があり、平成24年に瀬戸内市との協議が始まったことが岡山市の方針転換の引き金となったと、言えます。

そして、記録からみて全く同じ時期に、必要炉数が24炉から28炉に変えられた事も事実です。

さらに、この時期は、まさに富吉の新斎場建設問題で地元が二分されてしまう時期と同じころです。

興味深いことに、当時瀬戸内市は、平成25年4月の瀬戸内市議会に出された報告書によると、瀬戸内市分2炉、岡山市分6炉の8炉で試算しています。これは東区の推定死亡者数とされていますが、当時は、富吉の北斎場が非常に不透明な時期であり、いつになるか何炉つくれるかも分からない時期でした。瀬戸内市が勝手に試算したとは考えにくいのではないでしょうか。

 

すなわち、正式には平成28年に瀬戸内市から申し入れがあって協議を始めた、と市長の提案理由説明でもありましたが、しかし、平成24年には打診があり、当時の富吉の先行き不透明な動向を背景に、岡山市の方針が3か所体制に変わり、必要炉数も28炉に増えた。ということになります。

必要炉数の変更に関して言えば、平均火葬数に2を使うか、2.5を使うかで、必要炉数は大きく変わるし、変えられるということです。

一日の平均火葬数に、どの数字を充てるかは自治体の裁量であり、日本環境斎苑協会のマニュアルにも、近年では1~3の範囲で設定されることが多い、とあります。しかも、岡山市は、先述の基本構想で「中間値」の「2」を使う、と記載しており、実態を考慮したというよりは、単純に真ん中の「2」を採用したと自ら述べています。これが24炉から28炉に増えた直接の原因です。

付け加えれば、日本環境斎苑協会が示すこの試算方法は、「集中係数」という指数をかけるので、一年で火葬が集中する日の必要炉数を出す計算です。それは本会議答弁でも必要炉数の試算方法について、「岡山市全体として平均的に,日常的にその業務をこなしていくという視点ではなく,火葬需要が集中する友引明けであるとかそういったときに滞りなく対応できるような視点から火葬炉の算定を行っております。」と、局長答弁があります。しかし、火葬が集中する日の計算をするのに、集中日の「平均火葬件数」を「2」に限定するのは、現在も3回転する場合がある実態とかけ離れており不可解です。年間の一日平均火葬数と読み違えてないか、という疑念も拭えません。

今後は、コロナ禍の影響もあり葬儀のスタイルも小規模化・少人数化する傾向も見受けられます。集中日の3回転運用については、ご遺族の希望の日に対応できるという姿勢こそ大切で、否定されるものではないと思います。

ちなみに、平成32年、今年の火葬数に対し、2.5回で試算すると、今年の必要炉数は18炉で、実態に近い炉数になることを指摘しておきます。

 

もう一点、平成29年の基本構想で富吉の北斎場の炉数を決めるとき、3カ所体制を前提に決められたので、最大想定火葬数から東山想定分の5060件と西大寺分928件を引いて、4095件分として12炉とされました。この計算も実態からずれてきています。

東山斎場の年間火葬数は、リニューアルした後も昨年度一年間で5900件を超えており、900件の差が出ています。平成52年想定件数から東山分を除けば3731件となり、必要な炉数は岡山市方式で計算したとしても11炉となります。富吉も1炉少なくてすむし、実数から逆算しても瀬戸内市斎場の2炉には不要となります。当初の2カ所体制で十分だという裏付けになる数値です。

 

最後に、東区の人は不便になるのか、という点ですが、もともと瀬戸内市は、単独で斎場を作る場合も基本計画で比較しています。単独で作る場合は3炉。瀬戸内市民が火葬ピーク時に必要な炉数は、1.6炉です。岡山市が想定している瀬戸内市斎場利用数のピーク時に必要な炉数も同じく1.6炉です。瀬戸内市と岡山市のピークは5年のずれもあります。

瀬戸内市が単独で建てた斎場を、岡山市民が市外利用したとしても大きな混乱は起きないのではないでしょうか。市外利用分の35000円を補助したとすれば、16年間で約2.1億円です。共同で建設する場合は、毎年約1000万円の負担金が発生する見込みですので、建設費10.5憶を合わせて16年で約12億円です。メンテナンス等の経費もかかってくるでしょう。有利な財源を使ったとしても、税金は税金です。

市外利用の場合、予約で後回しにされるなどは、私は聞いたことはありません。瀬戸内市単独斎場を利用した分だけ補助をする案について、シミュレーションも比較検討もしたことすらない、という点で行政の在り方としても疑問です。

また、政令市で大きい自治体だから財政規模の小さい近隣自治体への責任もあるという意見については、火葬場についても言えるのか疑問です。今後も玉野市斎場や吉備中央町斎場を利用する岡山市民は大勢おられるでしょう。それらが建て替えする時に同じ理論が成り立ってしまいます。インフラの広域連携とは全く違います。

 

人生の最期、気持ちよくお見送りができるようにと願うのはわたし達も全く同じです。

しかし、いったん作ってしまうと将来にわたって、維持管理費が発生し、市民負担がかかるわけです。事務委託がいつ解消するかも全く不透明で連携はいつまで続くのでしょうか。

今、東山斎場が稼働し始めて実態と試算がずれていることも実証されつつあるにもかかわらず、計画の数値を見直すことなく突き進むことはやめていただきたい。

コロナ禍で今後の税収も支出も不透明な今こそ、相手方があったとしても無駄なものは無駄と、引き返す勇気を持っていただきたいと訴えまして、議員各位のご賛同をお願いし、反対討論とさせていただきます。