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6月17日に林じゅん議員が行った個人質問の、最初の質問の原稿です。
1 教育大綱と教育環境の充実について
全国学力・学習状況調査、以下、全国学テは、何を測るのか学力の定義が明確な調査にはなっていないとの指摘があります。
調査の設計が、テストの理論も大規模調査の手法も踏まえておらず、肝心の測りたい「学力」の定義も曖昧だというものです。
日本の子どもたちの学力が国際比較で上がった、あるいは下がった、と話題になるPISA調査は、全員が同じ問題を解くようにはなっていません。
一人の子どもに全ての範囲の問題を出して、解答させるのでは時間的にも体力・精神的にも負担が大きくなり過ぎます。
そこで、例えばある科目の調査で一人の子どもに100問を解かせるのではなく、グループを抽出してから、あるグループには1と2の分野で20問、別なグループには2と3の分野で20問、というように重複しつつ別な問題を解かせる重複分冊テストで、全体を把握します。一人の子どもが全範囲の問題を解くわけではなく、順位も出ませんが、集団としての学力が分かる方法です。
全国学テでは、全ての子どもが同じ問題を解きます。出題できるのは限られた時間で一人の子どもが解ける量だけになってしまいます。その意味では、文科省が全国学テで測れるのは学力の一部だけだ、というのは当たっています。
PISA調査では、項目反応理論を踏まえて、異なる問題でも同じ質になるよう、調整しています。問題の質を揃えるには、非公開の問題が必要です。
全ての子どもに同じ問題を解かせて、全ての問題を公表する全国学テでは、経年的に問題の質を揃えることができません。
もともと子どもたち全体の学力やその変化を把握できる設計になっていないのです。
全国学テが2007年に始まってからの平均正答率の変化を調べてみました。東日本大震災の2011年度とコロナ禍の昨年2020年度以外の値です。
全国の平均正答率は、2007年から2019年の間に、小学生国語Aで62.9%から83.5%まで、小学生国語Bで49.6%から78.0%まで、小学生算数Aで63.7%から82.1%、小学生算数Bで45.2%から63.6%まで上がったり、下がったりしています。中学生も他の教科も正答率は上下しています。
岡山市については、2016年から2019年を拾いました。平均正答率の変化は、全国と同様です。
問題の質や水準についての設計は示されておらず、2021年度の平均正答率が上がったとしても下がったとしても、問題が変わったためなのか、子どもたちの学力が変わったためなのかは分かりません。
子どもたちの学力の変化は分からず、年度ごとの競争的順位しか分からない調査です。
第二期教育大綱では、全国の平均正答率との差を指標にしていますが、これだけ変化する値について、100分の1の違いに拘泥する意味が分かりません。
令和2年度(2020年度)の第一回岡山市総合教育会議の中で、教育委員から全国学テが導入された最初の頃について「対策が不十分だったので、少し取り組めば、もう見る見るうちに成果が上がっていった」という発言がありました。
全国学力テストの点数比較が注目を集め、得点対策が行われたことの反映だと思います。
得点の順位が注目を集める一方で、子どもたちの点数の背景を分析する情報を十分に収集する調査にはなっていませんでした。
それでも回数を重ねる間に研究者が国勢調査など他の情報と組み合わせて、社会経済状況と正答率の相関を出すようにはなっています。
先生や学校の努力や工夫が及ばない、子どもを取り巻く社会経済状況が大きな部分を占めていることが明白になっています。
そこで質問です。
(1) 昨年は、新型コロナ禍で全国学テは中止されました。子どもたちの立ち位置が分からなくなり、教育に支障を来しましたか?
(2) 全国学テは一体、何を測っているのですか?
(3) 第二期教育大綱では、全国学テの平均正答率を指標に掲げました。が、全国学テでは、問題の質が変化します。全国の数値と比較しても、岡山市の子どもたちの学力が上がったのか、下がったのかは、分からないのではありませんか。
(4) 全国学テの数値を岡山市の教育の指標に設定するのは止めませんか。
(5) 2021年度に入って、家庭のネット環境やパソコン所有の調査が行われています。複数の子どもがいる世帯もあります。兄弟関係も考慮したオンライン学習の環境整備の支援が行われていますか。
(6) 市長の役目は、子どもたちの社会経済状況の格差をなくす施策を実施することで、全国学テの数値を指標に設定することではないのではありませんか。
2 高齢者の補聴器の購入補助について
保健福祉・協働委員会で加齢性難聴者の補聴器購入に対する公的補助制度の創設を求める国への意見書の提出について陳情が継続審査となっています。
私たちはその後も市民の意見を聞いてきました。
耳が聞こえにくくなると、コミュニケーションに支障を来すことによる認知症が指摘されています。厚生労働省も、難聴を認知症の危険因子としています。
補聴器の使用は、認知症の予防と高齢者の生活の質の維持に繋がります。
国の制度創設を待つだけでなく、自治体としても制度を設けるべきだと考えます。
そこで質問です。
(1) 加齢性難聴者のための補聴器の購入に、市として補助制度を設けてはどうですか。