議会質問・ニュース

【討論の原稿】 2022年6月議会 陳情(220628田中のぞみ)
[ 06月29日 ]

【印刷用PDF】220628 陳情討論 【田中】

 


日本共産党市議団の田中のぞみです。

市議団を代表して、以下2件の陳情について、討論します。

まず、陳情第18号 「消費税インボイス制度の実施延期を求めることについて」です。

消費税インボイス(適格請求書)制度は、その影響が非常に大きく、特に小規模事業者やフリーランス、個人事業主等に大打撃を与えるとして、様々な団体が中止、または延期などを求めています。地方議会からも昨年度末までに250以上の議会から同趣旨の意見書が上がっています。本陳情は、国へ意見書を求める形式ではありませんが、市民の切実な意思表示に対しては賛同できるものとして、採択を求めるものです。

このインボイス制度は、消費税10%とセットで導入が決定されました。来年10月に本格導入の予定で、以降、全ての課税事業者でインボイス請求書の発行が義務づけられます。政府は、導入理由として、消費税が10%と8%の複数税率になることで複雑化する事業者間の取引を正確に把握し、消費税の適正な課税を確保するためとしています。

しかし、問題点は多く、まず、請求書の様式変更、全請求書の登録番号の確認・保存など、事業者にとって多大な負担が生じると指摘されています。

さらに深刻なのは、年間売り上げが1000万円以下で消費税納税が免除されている小規模事業者、フリーランス、個人事業主や農家の方々です。インボイスを発行できる事業者になるためには課税業者になる必要があります。それが死活問題になります。

例えば、ある免税事業者の下請け会社A社が、部品を50万円でB社に納品し、B社が製品を作って100万で消費者に売る場合、仕入れと販売それぞれに消費税はかかるので、B社からみれば、50万円+消費税5万円の55万円で仕入れて、100万円+消費税10万円の110万円で売ることになります。これまでは、B社が後から国税局に納める消費税は、消費者から預かった消費税分10万円から仕入れ分を差し引いて、5万円でした。インボイス制度が始まると、仕入れ分の消費税を差し引くことができるのは対インボイス事業者のみとなるため、下請け会社A社が免税業者であり続ける場合は、B社が納める消費税が10万円に増えます。部品の仕入れで払った消費税分が差し引かれない・控除されないからです。

何が起きるかというと、この下請け会社A社は、55万円で納品していたものを50万円に値引きするよう求められるか、インボイスが発行できる課税業者になるか、取引から排除されるか、となります。いずれを選んでも、下請け会社A社にとっては、売り上げが大きく減る事に繋がります。
フリーランス、個人事業主も同様で深刻です。ひとり親方や、運輸業の運転手、ヤクルトさんや美容業界のエステティシャン、アニメーターやデザイナーなど多岐にわたります。

また、シルバー人材センターのようなところは、シルバー会員の労働に配分金を出して消費者にサービスを提供しています。会員は当然、インボイス発行者にはならないでしょうから、シルバー人材センターが納める消費税が10倍になるとの試算もあり、事業が成り立たない、と全国の議会から意見書が出されています。

農家の9割は免税事業者です。産直センターのようなところも同様の問題に直面します。仮に農家が簡易課税制度を適用し課税事業者になったとしても、今度は農家の大きな負担増に繋がります。誰にとっても、増税か負担増になる制度なわけです。

そもそも、33年前の消費税導入の際に、国民的世論の中で、年間売り上げ3000万円以下の小規模事業者は、負担しないとされた消費税でした。それが、年間売り上げ1000万円まで縮小され、さらに今、わずかな売り上げにも課税しようとしています。税金徴収は、原則累進制であるべきで、儲けに応じて、貯めている額に応じて課税するべきです。さらに、インボイス制度の問題点は、取引先にまで影響するため、上下関係の圧力の中で取引上の弱者を追い詰めることです。

日本の経済を支えているのは、その9割を占める中小企業です。インボイス制度が導入されれば、多くの廃業者を出してしまうと指摘されています。

複数税率でなければ必要ない制度です。

今、長引くコロナ禍と物価高騰で市民も事業主も大変です。こんな時に必要なのは、課税強化ではなく、減税です。全世界で91カ国が消費税に当たる税の減税に踏み切っています。せめて5%の一律税率に戻し、インボイス制度は中止して欲しいと思います。

日本商工会議所が「インボイス制度の導入は当分の間凍結すべき」と意見書を出しています。

少し紹介します。「同制度が導入された場合、免税事業者(約500万者)が取引から排除されたり、不当な値下げ圧力等を受けたりする懸念があることに加え、発行する請求書の様式変更、システムの入れ替え・回収、受け取った請求書等に登録番号があるかの確認、仕入れ先が免税事業者かどうかの確認、自社が発行する請求書等の保存、端数処理のルール変更など、事業者にとって多大な負担が生じることになる」(中略)「他方、足元では、コロナ禍で多くの中小企業が過剰債務を抱え、経営の立て直しを余儀なくされている。加えて今後、最低賃金の大幅な引き上げ等も見込まれ、事業継続・雇用維持にこれまで以上に注力する必要があり、制度導入に向けた準備に取りかかれる状況にはない。また、制度導入により行政側の徴税コストが増加する懸念もある。こうしたコロナ禍の影響等を踏まえ、インボイス制度の導入は当分の間、凍結すべきである。」というものです。これは物価高騰の前に出されています。

日本税理士連合会、全国中小企業団体中央会、中小企業家同友会、全建総連、全国青年税理士連盟、全国商工団体連合会などが、延期や反対を表明しています。

本陳情自体は、インボイス導入について、国ではなく市に延期を求める記述になっておりますが、岡山市の行政としても、国の専管事項と、関与しないわけにはいかない問題だと思います。市民の暮らしや生業を守る立場からも、本陳情の趣旨を真摯に受け止めて欲しいと思います。議会においては、党市議団としても継続審査を申し出たところでありますが、採決となる上は、市民への影響の大きさを鑑み、ぜひ採択をと議員各位の賛同を求めます。

 

次に、陳情第17号「石井谷市営住宅D―5及び同市有地の速やかなる現状有姿による売却処分を求めることについて」です。

本陳情は、特定の市営住宅地内にある募集停止となった棟について、売却するよう市に求めるものです。

まず、本陳情の物件は、1999年に募集停止となり、2009年からは空き家状態との答弁がありました。放置されたままであるため、本陳情が指摘するように、早急な対応が必要であると思います。

一方、市内には、募集停止となっている棟数は333件と多数ありますが、空き家になっている棟数は未調査、用途廃止になっているものいないものもあるとのことでした。どう処分していくのかについては全体の方針がありません。

さくら住座やみずほ住座など建て替えが行われた所については、旧物件について早々に売却や除却がなされていますが、方針は一定ではないようです。どのような優先順位の中で対応しているかは見えません。

そのような中で、石井谷市住の用途廃止棟について、売却を求める陳情が出ました。放置された物件であるので除却や適正管理を求めるなら理解できます。が、除却せずそのままでの売却を求めています。

この場所は、すぐそばに4階建てで比較的新しい市営住宅が建っており、住人も多くいます。周辺の道、特に当該建物の前は狭く、近くには公園があります。奥の古い棟についてどういう経緯で残っているのか、どう活用していくのか、市営住宅住民や近隣住民の意見も参考にする必要があると思います。その上で市が主体的に決定していくものであり、議会として売却ありきで採択するべきではないと思います。

本陳情には、「近隣同士で話し合った結果、現状有姿による売却が最優良提案とされたため」と記載がありますが、当該町内会長、市営住宅住民、地元の地域団体に私がヒアリングできた範囲ではそのような事実は確認できませんでした。市も認知していないとの答弁でした。逆に、当該物件を購入し、市営住宅側からトラック等の進入路を確保したい業者があるとの声が複数あり、住環境が悪化するかもしれない不安の声があったのも事実です。

以上の事から、市におかれては、用途廃止となった市営住宅については、早急に方針と計画を具体化することを求めます。その際には個別の住宅によっては、駐車場が足りないとか、建設の経緯など、個別ケースに応じ慎重にその処分方法を検討するべきであり、そのような背景が見えないまま、特定の市有物件に関する売却を議会として採択してしまうべきではないと思います。

 

以上、議員各位の賛同を求めまして、討論を終わります。