議会質問・ニュース

【議案討論の原稿】 24年2月定例岡山市議会(田中のぞみ)
[ 03月18日 ]

【確定】2024年2月議会 議案反対討論(田中)


 

日本共産党市議団の田中のぞみです。

会派を代表して、本議会に上程された補正予算を含む94件の議案のうち、甲第3号議案令和6年度岡山市一般会計予算について以下21件に対する議案について、委員長報告に反対の立場で討論します。

来年度の一般会計は、過去最高の予算額となり、市債も増えています。有利な財源を駆使し、指標の上では健全な財政というなら、なおさらこの春の市民の負担増を抑える手立てがもっと取れたのではないかと思えてなりません。

<後期高齢者医療保険料の値上げ>

まず、後期高齢者医療保険制度の保険料値上げに関わる甲第12号議案についてです。

平均で8.4%値上げされます。値上げ額で言えば過去最高です。予算分科会では改めて、岡山市の被保険者の56.6%半分以上が所得ゼロ、100万円以下が24.5%であることが分かりました。年金がほぼ上がらない中で、暮らしの何を削って払えというのでしょうか。

この度の平均値上げ額6,091円の4,662円分は、出産育児一時金の一部と、若年層の負担軽減分を後期高齢者の保険料で、新たに負担するものです。少子化問題は高齢者の責任ではありません。国の責任において取るべき対策を後期高齢者に押しつけるべきではありません。

値上げの総額は県全体で、これら新たな負担を含め年間42.6億円です。県の財政安定化基金は、今回も切り崩す予定としていながら過去に一度も使用したことの無い10億円とあわせて40億円あるとのことですから、値上げを避ける事は可能であったと指摘し、本議案に反対します。

<国保料値上げ>

続いて、国民健康保険料の値上げに関わる甲第4号議案と、甲第28号議案についてです。

4年間据え置いてきた国保料について、この春から平均5,217円引き上げます。

本議会の会派代表質問で、コロナ禍で影響を受け、コロナ特別貸し付け等を利用した働く世代が、1割しか返済できていないことも明らかになりました。国保は、非正規雇用や自営業者が多く加入する健康保険制度の最後の砦です。市民の暮らしは非常に厳しいままです。岡山市は、27億円ある基金を6.6億円切り崩して上昇幅を抑えていますが、あと5.2億円の取り崩しで保険料の据え置きはできます。それでも15億円の基金残高が残ります。

一方で県からの納付金請求額は上がり続ける見通しです。それでも県は、来年度予算で財政安定化基金を22億円積み増し、56億円にする予定です。県には納付金の上昇を抑える努力を強く求めます。

5年前の国保の都道府県化に際しては、構造的な問題を抱える国保財政に対し、全国知事会が国に要求した1兆円規模の財政支援について3,400億円に留まったままです。戦闘機を買うより暮らしを優先して欲しいと思います。

岡山市においては、単に値上げするだけではなく、削減対象外の法定外繰り入れで実施できる、市独自の減免制度を充実させることなど、独自の努力が見られなかったことは残念です。同じ収入でも多子家庭が損をするような均等割の構造は他の少子化対策と矛盾を感じます。5つの政令市で国に上乗せで独自の子どもの均等割減免を行っています。検討することを求め、値上げ議案に反対します。

<水道料金の値上げと苫田ダムからの受水>

続いて、水道料金の値上げ予算と、苫田ダムからの受水費に関わる甲第16号議案と甲第3号の該当部分についてです。

能登半島地震で改めてその大切さが浮き彫りになった水道管の耐震化ですが、基礎中の基礎といえる公共インフラ更新の財源が市民の水道料金だけ、という仕組みに納得できません。病院など基幹管路の耐震化を優先的にやっていく、とのことですが、これもほぼ全て市民の水道料金だけが財源です。だから、耐震化が抜本的に進まない、と考えます。基幹管路で51.6%、水道管全体でわずか20.5%の耐震化率です。しかも、年1%ずつ水道管を更新する計画が、今回の値上げ議論の中で年0.7%に引き下げされ、来年度予算の中で、「水道施設・管路耐震化等更新事業費」は昨年度より3.4億円削減されています。市民の水道料金だけに頼る事業会計では、耐震化は遅々として進まず、充実させようとすれば市民の水道料金は青天井で上がります。天秤にかける仕組みがおかしい。一般会計からの投入は避ける事はできません。市の姿勢が問われています。

一方で、半分以上使っていない苫田ダムからの受水費21億円については聖域のままです。水道事業会計の年間不足額が23億円との答弁がありましたが、無駄を削る努力の無いまま市民の水道料金を値上げする本議案には賛成できません。

<高齢者施設の管理者配置基準の緩和について>

続いて、高齢者施設及び障害者施設における管理者の配置基準を緩和する条項を含む、甲第30号、甲第32号、甲第35号、甲第37号、甲第41号、甲第42号、甲第43号、甲第44号、甲第45号、甲第47号、甲第48号、甲第49号議案の条例改正についてです。

各指定施設の管理者の配置基準について条例には、「施設長は、専らその職務に従事する常勤の者でなければならない」、と明記されており、原則兼務不可、専任かつ常勤の者を置くように規定されています。が、「ただし」と追記され、「管理上支障の無い範囲」という条件の下に、徐々に兼務規定が緩和され、今回は、同一敷地内を越えて兼務が可能と緩和される中身です。施設がどれだけ離れていても兼務できることになり、緊急の事態が発生した場合に、管理者が、不在、ということが起こりうるとのことです。「管理上支障の無い範囲」がどのような範囲かについて、明確な基準は無いとの分科会での答弁でした。管理者の名義貸し等が発生する可能性も否めません。

基準緩和の背景には、介護・福祉の人材不足があるとの事でした。これから先、より深刻化する高齢化社会を迎えるに当たり、現場の人材不足は深刻です。抜本的な処遇改善がなされないまま、人が足りないからと言って、なしくずしに配置基準を緩和することは、本末転倒です。現場の本当の声は、兼任兼務を重ねて少ない人数で業務をまわすことではなく、人材が集まり定着する条件を整えてほしいということではないでしょうか。この改正で根本的な問題は解決しない、と指摘し、これらの議案に反対します。

3年に一度の市の監査においては、管理者の兼務状況を把握した上で慎重に監査する旨の答弁がありましたが、30分以内で駆けつけられる範囲を越えない、や、副施設長がいる、など、市独自の視点を持つことを求めます。

<マイナンバーの利用拡大>

次に、マイナンバーの利用情報の拡大に関わる甲第21号議案です。マイナンバーに紐付ける個人情報がこれまでは、国会の審議を経て法律で定めるものだったのが、省令ですまされるよう変更となります。また、本条例案では、子ども医療費助成、介護の地域支援事業、心身障害者医療費給付の未成年の療育手帳情報と自立支援医療の利用状況や給付情報、マイナンバーに新たに紐づけるとしています。

マイナンバーで国民の管理を強化していくことは、賛成できません。


次に、甲第3号議案令和6年度岡山市一般会計予算について、です。

<路面電車の岡山駅前乗り入れ・広場改修>

まず、路面電車の岡山駅前広場乗り入れに関する予算についてです。

当初は乗り入れだけ10億円程度と一番費用対効果が高いと採用された平面乗り入れ案でしたが、その後、駅前広場の大改修や交差点の改良など43億円に増え、さらに市の重大なミスが発覚して事業費が86億円に増加することが分かった事業です。広場改修を圧縮して66億円になりましたが、今回早速その一部を復活するそうです。なんのための圧縮だったのでしょうか。66億円だった事業費も88.5億円になると発表されたばかりです。広場改修の段階的な復活により、100億円を越える事業となることは必至です。ここまで二転三転ブレる事業に、本当にその必要性があるのか、という声が上がるのは当然です。

そもそもこの事業は、総延長が非常に短い岡山市の路面電車を、岡山駅前方面にわずか100メートル乗り入れる事業です。多少便利になることは認めますが、今現在どれほどの人が不便を感じていて、解消しなければならないどんな課題があるのかは、明確に示されていません。そもそもJRと路面電車の乗り換え状況ついての調査はされていません。当然、乗り入れにより1,000人増えるとされる利用者の内訳も、示されません。

高齢者や障害者のためというのであれば、車両のバリアフリーや街なかの電停改良の方が先です。路面電車の活用なら、延伸する方がよっぽど効果的です。事業の優先順位が極めて不明瞭な事業なのです。岡山駅前を立派にしたいという事なら、事業目的としてそう言えばいいと思います。

数値化できない活性化の効果が大きいという説明ですが、本当にそうでしょうか。通勤や通学で使っている方が多いなら、乗り入れによる活性化や回遊性の向上には関係しません。むしろ寄り道が減る事を利益と評価してよいのかも疑問です。観光客はもともと目的地を持っている場合が多く、利用者が増えたとして、それは観光資源そのもの魅力が要因です。事業前と事業後において、何をもってその効果を図ることができるのか、はなはだ疑問です。残るは、やはり駅前の見た目や都市格の問題でしょうか。

岡山市全体で約20万人の交通不便地域に住んでいる方がいます。日々の買い物や病院にも困っている状況があり、デマンド型生活交通の利用範囲は6万人で、到底解決はしません。多くの市民が疑問に思うこの事業については、いったん、中止して市民的議論をすべきです。

<斎場関連>

次に瀬戸内市の新斎場関連の予算2.5億円についてです。

東山斎場では建替えで20炉が14炉に減りましたが、年間火葬数は20炉の時からほぼ変わっていません。この実績ベースで考えても、当初、岡山市が自ら試算していた計算が正しいと言えます。2012年時点では、将来2040年の最大需要数に必要な炉数は24炉と市民文教委員会に説明していました。現在、東山と北斎場の2つの斎場あわせて26炉あるわけですから、十分足りる計算です。あたかもあと2炉が足りないかのように2013年に、何の事前説明も無く計算方式を変え、必要炉数を28炉と変えています。いまだにその理由の説明はありませんが、瀬戸内市から斎場建設の打診があった時期と重なることを指摘してきました。

瀬戸内市の斎場建設に最大10.5億円も負担し、ランニングコストも考えると、岡山市民が瀬戸内市の斎場を利用された場合に、差額を補助する方が合理的だと指摘してきたわけですが、かたくなにシミュレーションも行いません。この予算は認められません。
また、岡山北斎場については、賛成した方々で作る推進協議会の要望事業1,170万円について、引き続き反対を表明します。

<匿名加工委託料について>

次に市民の匿名加工情報の提供に関する予算1,100万円についてです。

これは、企業や団体の求めに応じて、行政が持つ膨大な個人情報を匿名加工して提供するための加工委託料です。市役所が持つ個人情報は例えば、出自や婚姻など戸籍情報、収入、生活保護受給状況や児童扶養手当、滞納歴、病歴病状介護度、障害情報、逮捕・補導・指導歴、など極めてセンシティブな情報です。さらに、匿名加工するのは、第3者の外部委託業者です。匿名性がどのように担保されるのか、ミスはないのか、加工を解除する技術は開発されないのか、100%を保障することは不可能です。

匿名加工したところで、個人情報を守る本来の責務を放棄し、本人同意なく、目的外に流用し、民間のために外部提供することが、行政のやる仕事なのかと指摘し反対します。

<自衛隊への個人情報提供>

次に自衛官募集事務関係についてです。

法定受託事務ということで市は毎年、自衛官募集事務を請け負っていますが、義務ではないと市も答弁しています。今、自衛隊はGDP比で世界第3位の軍事費の軍隊になりつつあります。

岡山市は、3年前から18歳と22歳になる市民の宛名シールを作成し自衛隊に提供するとしています。本人の同意なしに氏名と住所を勝手に提供しています。市民のひろば等で、提供を希望しない場合は申し出ることができる旨周知されているとのことですが、若い世代は6割が市民のひろばを読んだことがない、との議論が本会議でもありました。学生世代であればなおさらです。本人同意をきちんと求める事は最低限必要です。

<ごみ袋有料化>

次に家庭ごみ有料化に関わる予算です。約4.5億円かけてゴミ袋を作成し、約9億円の売り上げを計上しています。家庭ごみ収集は発展途上国を見ても、自治体の最も基礎的な業務であり、手数料を取るべきではありません。

横浜市では、ごみ袋は無料のまま3割ものごみ減量に成功し、焼却場を2か所廃止し、無料のままさらに1割の減量をすすめています。どうやってゴミ分別を市民に理解・徹底してもらうかがカギですが、ゴミ袋を有料化するというペナルティを押し付けても結果、抜本的にゴミは減りませんでした。
3月から始まったプラスチック回収により、残るのは生ごみです。生ゴミの再資源化を具体化しなければ、ゴミ袋が有料でもゴミは減らないと指摘し、無料に戻すよう求めます。

<市立園の廃止・民営化>

次に市立の幼稚園、保育園廃止民営化に関する予算と条例です。

来年度の一次調整でも未入園児童が1,126人もおり、昨年より増えていることは深刻です。待機児童問題は根本的な解決には至っていません。

一方で、甲第54号議案では、来年度13の市立幼稚園・保育園が廃止される案が示されています。2つの市立認定こども園、4つの私立認定こども園に統合されます。さらに、今後も20以上の市立園が統廃合民営化の対象として動いています。これは一気に加速しており、まさに市有財産整理が急ピッチで行われています。

そもそも民間園は生き残りをかけて、自らのカラーを強く打ち出すことがあります。これからの少子化時代はさらにその競争が激しくなるでしょう。義務教育である小学校や中学校は公立が中心です。なぜでしょうか。小学校、中学校について、民ができることを民でとは誰も言いません。その理由をぜひ考えて欲しいと思います。就学前も同じであるべきです。小学校区単位で、市立幼稚園や保育園があるのは珍しく、就学前から地域で連携した保育教育ができていたのは岡山市の大きな特徴であり、強みでした。なぜみずから投げ捨てるのでしょうか。

複数園の統合による巨大園化と、就学前の子育て環境に特色や選別、格差を持ち込みかねない民間園中心のその方針には反対します。

甲第74号議案 岡山市・建部町・瀬戸町新市基本計画の変更について、も、市立園統廃合の記載があるため賛成しかねます。

<学校給食>

次に学校給食についてです。

学校給食は食育であり教育の一環です。「食」がいろんな意味で見直され注目されています。学校で、いい匂いがしてきて、地元の安全な食材を使った出来たての給食を、温かいうちに美味しく食べてもらう経験が何よりの教育あり、国づくりの根幹だと考えます。その機会を「効率化」や「合理化」という言葉で奪ってはならないと思います。

赤田の学校給食センターの老朽化建て替えは必要だと考えますが、この建替えに伴い、新たに7校で自校調理をやめてセンターに集約し大規模化する事には反対です。給食は自校調理を基本とするべきです。

自校調理であっても、調理業務のみを民間委託する割合がいつの間にか7割に引き上げられています。給食調理を民間委託した学校には、その浮いた人件費分が基金に積み立てられています。甲第84号議案令和5年度岡山市一般会計補正予算で1168万円でした。浮いた人件費と言いますが、全く同じ量の給食をそれだけ少ないお金で作るわけですから、それだけ低い条件で調理員さんを働かせていることになります。当然人手不足となります。実際に、中区のある中学校で、新年度の直前で受託をキャンセルされ、給食が調理できない事態が発生したことは記憶に新しいところです。
委託先の人件費については市が率先して賃金アップを図る責任があるはずで、民間のコストメリットなどもともとあってはならないはずです。残るのは、突然の廃業などのリスクだけです。

子ども達の給食は直営で調理にも責任を持つことを求め、補正予算と合わせて反対します。

<岡山市学力アセス>

最後に岡山学力アセスについての5,600万円です。

岡山学力アセスは、2016年に導入され、当初は4年生5年生を対象に市の教員が手作りで子どもに合った問題を考えるというスタンスであり反対していませんでしたが、その対象が2年生まで拡大され、その運用も業者に丸投げされました。

結果的に、全国学力テストと実施日も同じになり、実施様式も似通っています。全国学力テストのためのテストをやるようになるのでは、と指摘してきた懸念がその通りになっています。本当に、子どもの真の学力を知りたいなら、抜き打ち、抽出でやるべきはないでしょうか。悉皆で行う必要性はありません。全員強制の統一テストが、国連が繰り返し指摘する我が国の過度な競争教育を激化させると指摘します。

子どもたちにしっかりわかる教育を保障するには教職員を増やし、少人数学級を早急に進めることが求められます。学力アセスをやめ予算をそちらに回すことを望みます。

以上、反対理由を述べさせていただきました。

議員の皆様のご賛同をお願いいたします。