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日本共産党 岡山市議団

(資料) 2015年9月議会 陳情に対する討論 林潤(9/24)

15年10月6日

 

●動画(インターネット視聴)はこちら http://www.okayama-city.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=577 (開始から1時間1分ごろ~1時間21分ごろまで)

●質問原稿(PDF)はこちら 20150924 討論・陳情(林)

●全文は以下をご覧ください

 

日本共産党岡山市議団の林潤です。

会派を代表して、陳情18号安全保障関連法案の慎重な審議を求める意見書の提出について、及び陳情第20号「平和安全法制」に対し、その慎重審議を要請する意見書の提出について、について委員会報告に反対し、採択すべきとの立場で討論します。

いずれも安全保障関連法案、私たちはその内容から戦争法案と呼んでいます、について国会での慎重審議を求めるものです。

各地の地方議会で180を超える慎重審議を求める意見書が採択されています。廃案を求める意見書も140を超えています。近隣では瀬戸内市で議員発議の慎重審議を求める意見書が採択されています。

こうした地方議会の意見表明が相次ぐ中、参議院特別委員会では18日に、参院本会議では19日未明に強引な採決が行われてしまいました。

採決されてしまった法案について慎重審議を求めることになり、がっかりしたり今さらという気がしたりするかもしれないと思いましたが、今は全くそんな思いにはなっていません。

このままでは終わらない、立憲主義と民主主義を取り戻そう、という諦めない市民の声が聞こえてくるからです。

参議院での審議と採決の状況を振り返ってみたいと思います。

参議院特別委員会での「採決」の様子は私も中継を見ていました。

鴻池委員長が何を言っているのかテレビ中継からは分からず、現場にいるレポーターも状況を把握できず「採決されたとみられます」とアナウンスする始末でした。

見ていると委員長席付近の与党委員が大きく手を振り「立ち上がれ」と指示をし、それに応じて賛成する委員が立ち上がっていました。

議事録には「聴取不能」と記録されています。

何を言われているかも分からないのに身振り手振りに従って立ったり座ったりする国会議員達によって「可決」されたということです。

採決までの過程を見ても審議は足りていません。

中央公聴会と地方公聴会を受けての審議は不十分どころかそもそも行われませんでした。

地方公聴会の公募には過去最高の17人をはるかに超える95人が応募し、全員が反対の立場でした。国民の高い関心と反対を訴えたいとの思いが表れていました。

その地方公聴会には参院特別委員会の委員の半分以下しか参加していませんでした。公述人から出された意見を委員に周知することは行われませんでした。公述人の意見に基づく議論を行わないままでの採決では公聴会がセレモニーと批判されるのも当然です。

公聴会に出された意見ばかりでなく他にも委員が求めた資料が未提出のままでした。与党が次世代の党、日本を元気にする会、新党改革と合意したとされる改正案の説明もなされませんでした。

そのような状態で採決を行うとは議会人としてありえないことです。

まさに「慎重審議」が必要でした。

国会でこのような採決を行ったこと自体に対する抗議の意思表示として慎重審議を求める陳情は採択すべきです。

 

今国会で可決された戦争法案は11の法律の総称です。

1.自衛隊法

2.国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律

3.重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律

4.重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律

5.武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和及び独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律

6.武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律

7.武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律

8.武力攻撃事態及び存立危機事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律

9.武力攻撃事態及び存立危機事態における捕虜等の取扱いに関する法律

10.国家安全保障会議設置法

11.国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力

支援活動等に関する法律

1から10番目は法改正で11番目が新規制定です。

これらの国のあり方に関わる11本もの法案を一括で提案しておいて審議時間の目安を重要法案一本分の100時間程度とすることが最初から不十分です。

 

私たちは国民の生命、財産は守らなくてはならないと考えています。

憲法九条と現行の法制度の下で歴代内閣は個別的自衛権を認め、急迫不正の侵害に対しては自衛の手段を行使するとしてきました。

私たちも安全保障のあり方として今すぐの自衛隊の廃止は求めてはいませんし、個別的自衛権は行使できると考えています。集団的自衛権の行使を禁ずることは自国防衛の否定ではありません。

集団的自衛権を行使するための戦争法案は日本が攻撃を受けていないのにアメリカの戦争に加担する法案です。

日本を攻撃していない国への攻撃に加わることは相手にとっては日本から先に攻撃を受けたことになり日本への反撃の口実を与えるものです。戦争しないための法案などではあり得ません。だから戦争法案と呼んでいます。

与党は、新三要件で厳密な歯止めを掛けていると言いますが、新三要件には「内閣が存立危機事態だと判断すれば、よその戦争に首を突っ込みますよ」と書いてあるだけです。存立危機事態の定義はあいまいで判断は内閣任せです。武力行使にあたって必要最小限度の定義もありません。歯止めでも何でもありません。

国会の例外なき事前承認は新規制定の国際平和支援法のみです。

既存の法律の改正である自衛隊法、重要影響事態安全確保法、国際平和協力法、船舶検査活動法には国会の事後承認が認められています。

与党と次世代の党、日本を元気にする会、新党改革との合意による附帯決議で「例外なき国会承認」が追加されたのはホルムズ海峡での機雷掃海です。法的拘束力を持たせるための法律本文の修正は行われず、機雷掃海は政府も現実味に乏しいことを認めた活動であり実質的に意味がありません。

戦争法は、出発点の集団的自衛権の行使容認の定義が曖昧であり、戦後最長の会期延長をした国会審議でも政府の説明は国民を納得させることができませんでした。

集団的自衛権の行使を容認する際に安倍首相は日本人の女性や子どもお年寄りを運んでいるアメリカの軍艦の絵を示して「日本人を守るためだ」と言いました。ところが参議院の審議で日本人が乗船していなくてもアメリカの軍艦を守ることが明らかになりました。

安倍首相が自衛隊の活動として示していたホルムズ海峡の機雷封鎖は危険性が遠のきました。

発生の仕組みも広がる仕組みも全く異なる戦争と火事を同列に扱った安倍首相の説明はかえって批判を広げました。

9月14日の参院特別委員会では自民党の佐藤委員、通称ひげの隊長が中国の軍事力について脅威をあおる質問をしていました。その時も中国に日本を攻撃する意図があるとは言えませんでした。防衛省も中国からの侵略の可能性について答弁できません。

それに他国の軍備をあれこれ挙げて「だから我が方も備えを強化すべき」というのは冷戦時代の軍拡競争の論理です。抜け出さなくてはならない考え方です。

感情的に危機を訴えても自衛隊員に血を流させなくてはならない具体例となると示すことができないのが安倍内閣の答弁です。

海外で自衛隊が戦って戦死者が出るようになると志願者が減り徴兵制に繋がるとの危惧もあります。

それに対して、安倍首相は憲法18条で奴隷的拘束や意に反する苦役が禁じられているから徴兵制はありえない、と言います。

集団的自衛権の行使も従来、憲法で禁じられていると歴代政府が言ってきたことです。9条の解釈を変更した内閣が18条の解釈を変えない保障はありません。

たとえ徴兵制が敷かれなくても経済的徴兵制とも言われる仕組みが強化される可能性があります。

アメリカでは貧困層、特に移民が教育支援や医療支援、市民権につられて軍隊に志願しています。

2003年5月3日に出版されたYomiuriWeekly臨時増刊『イラク解放 完全ドキュメント』という本があります。

イラク攻撃を行った米軍を強くて格好いいイラク国民を解放した正義の味方のように描いています。とても戦争の実態を伝えているとは言えない雑誌ですが、それでも軍隊の現実をいくらか描写しています。

兵士の入隊動機を書いている章で、仕事がない移民が就職に有利な市民権の取得をしやすいように、と志願したり、貧困層が医療や教育の支援につられて入隊したりしていることが書かれています。

日本でも派遣法が改悪され、高等教育には高い費用が掛かります。非正規雇用や高学費を放置し、誘導策を採れば「貧困から抜け出すチャンスになる」と考える人たちを自衛隊に誘い込むことができます。

経済的に苦労している人達に対して「あなた達が自衛隊で命を賭けてね。生きて帰れたら高校や大学に行けるかもよ。」と言う国になります。

国全体の仕組みとして戦争する国になることへの不安を安倍内閣は払拭できていません。

こうした問題点を含む法案に対して、党派を超えて広範な国民から不安と反対の声が上げられています。岡山市でも野党共同の街頭演説が何回も行われました。

大規模なデモや集会、国会議員への申し入れ、ファックスやメールでの意見表明も広がりました。

国会議員はこの声を聞くべきでした。

確かにデモに何人集まったら、署名が何筆集まったら法案の可否を決めなくてはならないという手続きではありません。しかし選挙から選挙までの間の民意を示すものです。それを反映するのが国会議員の役割です。

国民の前で議論して、理解と納得が得られたものを法律として制定するために国会での審議があるのです。

特に今回の戦争法は先の参議院選挙と総選挙での与党の国会多数を理由に進めていいものではありません。

自民党の2014年総選挙「重点政策集」を振り返ってみると、冒頭で図表で説明しながら主要政策として押し出しているのは「アベノミクス」、次いで「経済再生」「地方創生」「女性活躍」「財政再建」です。まったく安保法制・戦争法案には触れていません。

26ページ、2万6千字に及ぶ重点政策集で安全保障法制について記述しているのは24ページ目の123文字です。しかも政策集には法案の条文も何も具体的なことは書いてありません。

総選挙の比例での自民党の得票は有権者の17%です。投票した人の中でも政党支持に直結する比例の得票は3割なのに6割の議席を得ています。この選挙結果と安保法制を隠した公約での選挙から「戦争法案は選挙で支持されている」という民意をこじつけることは無理があります。

だから改憲や自衛隊の活動拡大に賛成する人達からも反対の声が上がっているのです。

戦争法に賛成する人達は口を開けば「安全保障環境が変わった」と言います。

どう変わっているでしょうか。

70年に渡って敵対してきたアメリカとキューバは核戦争の危機さえありました。その2国が国交を回復し相互に大使館を設置しました。

イランは核査察で国際社会と合意し、ホルムズ海峡の機雷封鎖は現実味を失いました。

アメリカと中国は牽制しあいながらも対話を欠かさず、アメリカ軍と中国軍の共同訓練も行っています。

北朝鮮は韓国との間で準戦時状態を宣言し緊張が高まりましたが、交渉で戦争は回避されました。韓国は自国の兵士に怪我人が出ても戦争には突入しませんでした。

南沙諸島を巡る南シナ海の情勢についてASEANと中国との間で合意した東シナ海の領有権争いを抑止するための枠組みとして南シナ海行動宣言があり、さらに法的拘束力を持つ行動規範にしていこうとの動きがあります。

世界の情勢には戦争回避の強い動きがあります。

その世界で憲法9条を持つ日本は武力に頼らない国際関係を築く先頭に立つべきです。

安全保障環境の変化の例としてテロ攻撃やサイバー攻撃の危険性が叫ばれています。

確かに日本対外国の戦争よりもありそうなのはテロ攻撃です。しかし軍隊でテロは防げません。

自爆攻撃をするような勢力には抑止力など意味はありません。軍事対応をすればするほど頻発するのがテロ攻撃です。

日本は今まで武力で攻めてこないから「攻撃する必要が無い国」でした。それがアメリカの戦争を支援したら「敵を助けるものは敵」になってしまいます。

第170回国会の外交防衛委員会に参考人として招致されたペシャワール会の中村哲医師、アフガニスタン・パキスタンの紛争地帯で現地の人達が農業で生活していけるように長年に渡って支援をされている方です、が次のように語っています。

「さらに、対日感情につきましても、これは少しずつ陰りが見えてきておるということは私は是非伝えておく必要があると。かつて広島、長崎というのは現地では有名でありまして、アフガン人の知識人のほとんどは、アフガニスタンの独立と日本の独立が同じ日だというふうに信じている人が多いくらい親日的なんですね。ところが、最近に至りまして、米国の軍事活動に協力しているということがだんだん知れ渡ってくるにつれて、私たちも身辺に危険を感じるようになりました。

やはり、あの最も親しいと思っていた日本が同胞を殺すのかと思えばこれは面白くないわけでありまして、これは日々日本に対する感情は悪くなっているということははっきり言ってもいいんじゃないかと思います。かつては、我々、外国人、欧米人と間違えられないために日の丸を付けておれば、まず山の中のどこに行っても安全だった。ところが、今その日の丸を消さざるを得ないという状況に立ち入っているというのが現実であります。」

紛争地帯での人道支援に携わる人達から同様の声が上げられています。

アメリカの戦争の支援をすれば、抑止力にもならないばかりか敵を作るのが戦争法です。

サイバー攻撃を防ぐのは海外での武力行使ではなくコンピューター技術です。

このような戦争法案に対して、圧倒的多数の憲法学者、歴代の内閣法制局長官、元最高裁判所長官を含むかつてない広範な人々から批判が集中しました。

8月30日には国会前に12万人、全国で100万人とも言われる人達が街頭に出て戦争法案反対を訴えました。

14日には国会前に4万5千人もが集まりました。岡山市では12日には1000人を超えるデモ隊が桃太郎通りを歩き、15日には岡山市中区だけで150人がデモ行進をしました。

岡山でもどこでも主催者の想定を上回る参加者が集まっています。私たちが街頭で訴えていると家の中で聞きつけた人がやってきて「私にも言わせて欲しい」とマイクを握って戦争法案反対を訴えたこともあります。

国民の間に「私たち自身が主権者だ」「今、黙ってはいられない」との思いが広がっています。

これらの運動や発言は、単に戦争する国への危機感だけではありません。政治について調べて考え、自ら行動し、政治家の言動をチェックし、いいと思うことを応援し駄目なものにノーを言うという民主主義の精神の実践です。それがかつてなく広がっています。

法が成立すると諦めムードが流れがちですが、この件については成立後の世論調査でも成立を支持しない意見が多数です。

日本共産党はこれらの声を受けて戦争法(安保法制)を廃止するための国民連合政府を樹立することを提案しました。

戦争法を白紙に戻すためには廃止法案の議決と集団的自衛権の行使を容認した閣議決定の撤回が必要です。その二つを任務とする政府を作るために戦争法反対の一点での大胆な連携と協力を呼び掛けています。

戦争法への反対の根本にある平和憲法が日本の中に芽生えていた民主主義の考え方を取り込んだ先進的な内容を持っていて、押し付けられたとは言えないことは2月議会の質問で述べました。

今日は手続きについて触れたいと思います。

現行憲法は帝国議会で大日本帝国憲法を改正する手続きを経て定められました。

憲法改正案の提案者となったのは後に自民党に入った吉田茂首相でした。

国会審議で政府案にいくつかの修正が加えられました。国民主権の原則を明確にしたこと、戦力の不保持を定めた第9条第2項に「前項の目的を達するため」という文言を挿入したこと、生存権の規定を追加したことなど10以上の項目があります。

日本の国会で議論し修正された内容も制定過程も日本国民の憲法です。アメリカに押し付けられた憲法だ、などと自虐的になる必要は全くありません。

その憲法に違反する戦争法を認めることはできません。

私たちとしては審議を尽くせばますます法案の問題点が明らかになり、廃案にすべきことが明白になると考えていました。

反対に、国民の理解が不十分と認める安倍内閣の立場からしても理解を得るためには更なる審議をすべきでした。

国会のあり方に警鐘を鳴らす意思表示をするためにも慎重審議を求める意見書の提出を求める陳情は採択すべきです。

以上、理由を申し述べました。議員各位の賛同を賜りますようお願い申し上げまして、討論を終わります。



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