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日本共産党 岡山市議団

(資料) 2015年9月議会 議案に対する討論 河田正一(9/24)

15年10月6日

●動画(インターネット視聴)はこちら http://www.okayama-city.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=577 (開始から39分ごろ~51分ごろまで)

●質問原稿(PDF)はこちら 20150924 討論・議案(河田)

●全文は以下をご覧ください

私は、日本共産党岡山市議団を代表して、9月定例会に提案された 37議案のうち、 甲第168号 岡山市証明事務手数料条例の一部を改正する条例の制定について、 甲第169号 岡山市印鑑登録及び証明に関する条例の一部を改正する条例の制定について、 甲第170号 岡山市住民基本台帳カードの利用に関する条例の一部を改正する条例の制定について、 甲第171号 岡山市個人番号カードの利用による証明書等の交付に関する条例の制定についての4議案に反対の立場で討論します。

 

これらの4議案はいずれも、個人番号カードまたは住民基本台帳カードに関する条例です。個人番号カードおよび住基カードはどちらも発行機を利用することにより住民票、印鑑証明などを取得するためのものです。しかし個人番号カードは窓口発行の証明書発行にとどまらず、多くの個人情報を内包するものとなります。

そもそも個人番号制度は、国民の各種個人情報を個人番号(マイナンバー)によって結びつける制度です。国民一人ひとりに特定の番号を附番し、様々な機関や事務所などに散在する様々な国民の個人情報を個人番号によって名寄せ、参照することを可能とすることで、行政などがそれらの個人情報を活用しようとする制度です。

日本共産党は、次の3点で反対しました。①プライバシー侵害や、なりすましなどの犯罪を常態化する恐れがある。②共通番号システムは、初期投資3400億円ともされる巨額プロジェクトにもかかわらず、その具体的メリットも費用対効果も示されないまま、新たな国民負担が求められ続ける。③税や社会保障の分野では徴税強化や社会保障給付の削減の手段とされかねないと導入に反対しました。

マイナンバーで管理される個人情報は、現在は、社会保障、税、災害の3分野の98行政事務です。しかし政府・産業界は、対象情報の拡大、カード活用の拡大に躍起になっています。マイナンバー制度がスタートする前から利用拡大の法改正提案が今国会に提出され批判が集中しました。その内容は、①銀行口座・ゆうちょ口座のマイナンバーへの紐づけ ②特定健診結果、予防接種履歴 などです。

国民は”番号管理”という大きな手間を強いられることになります。

国民にとっては、源泉徴収票など税務署に提出書類にはマイナンバーの記入が義務付けられます。労働者は仕事が変わればそのたびにマイナンバーの提出が義務付けられます。非正規雇用やアルバイトで働く人、様々な相手から報酬を受け取る自営業の人などは、多くの企業や個人に自らの番号を知らせることになります。また、めったに使うことのない人にとって、番号と暗証番号の管理も新たな問題を引き起こしかねません。

中小企業にとってもメリットはほとんどありません。事業主は、従業員や扶養家族のマイナンバーを収集し、番号の保管、情報漏えいの防止、担当者の配置などを行わなければなりません。退職した従業員の番号の保管・管理も7年間しなくてはなりません。零細事業主にとっては大きな負担ですが、費用の補助など実施しないというのが政府の方針です。

政府は、マイナンバー導入で各種行政手続等の手間が省けて便利になると盛んに宣伝していますが、マイナンバーにより、所得捕捉や他の行政実務との照会がやりやすくするというのは、これらはもっぱら行政サイドの利便性であり、納税者や事業主に特段のメリットはありません。

 

マイナンバー制度導入の最大の狙いは、国民の収入・財産の実態を政府がつかみ、税・保険料の徴収強化と社会保障の給付削減を押し付けることです。

社会保障と税の共通番号導入を、早くから提唱してきたのは財界です。共通番号導入によって個人からの税・保険料徴収を強化するとともに各人が収めた税・保険料額と各人が受けている年金や医療の給付額を対照できるようにし、“給付に見合った負担“、”負担に見合った給付“の名で負担増・給付削減を推進する、それにより、社会保障にかかる国の財政負担、大企業の税、保険料負担を軽減するというのが、財界の主張です。(04年9月、日経連「社会保障制度等の一体改革に向けて」)

 

外国においても、共通番号制度を導入している国はあります。代表的なのはアメリカ、韓国、スウェーデンが日本でよく紹介されています。

米国は、番号を取得することは任意ですが、あらゆる場面で提示・提供が求められるので、社会保障番号がなければ不便でもあり、半強制的に共通番号が社会に広がった側面があります。

韓国では、スパイ対策として80年代に常時携帯をさせた歴史があり、官民で本人確認や利用が行われ、共通番号として広く普及した経緯があります。

両国では、共通番号と個人情報がセットで大量流出し、プライバシー侵害、犯罪利用、なりすまし被害が横行して社会問題化しています。米国では、国防総省職員には異なる識別番号を導入したり、州法により利用規制が始まっています。

韓国も利用範囲を限定する法規制が行われ、共通版の利用を見直す動きが強まっています。

これらのマイナンバー先行国での問題点は、①IT先進国と言われる国の政府機関や大企業でも情報漏えいを防げていないこと。  ②共通番号の官民利用の推進は、情報を取り扱う人、場所が増え、不正利用や情報漏えいの危険が高まること。 ③民間で普及した制度は問題が生じてもすぐに中止したり見直すことが困難、などが言われています。これらの点は日本でも起こりうることです。

ドイツでは、行政分野別の番号制度の下で個人情報が統合されないことになっており、共通番号制度が「人間の尊厳」「人格権」を侵害する制度だと認識されています。

フランスでは、国民登録番号を分野をまたいで利用すると、同番号をキーとして国民の情報がすべて見られてしまうリスクがあるとして、市民的自由とプライバシーを重視する立場から分野別番号制度となっています。

イギリスは、06年に国民ID登録簿と国民IDカード法を制定しました。しかし、10年に広範な反対運動で廃止になりました。

 

日本では、今年6月に日本年金機構から125万件に上る膨大な個人情報が流出したことが発覚し大問題になっています。今回の個人情報流出事件は、年金機構のような公的な機関がマイナンバーを保有するから大丈夫だという『安全神話』を根底から突き崩しました。

大量の個人情報を保有し、一定のセキュリティ対策を講じていたとされていた日本年金機構から、大量の個人情報が流出したことは、改めて、個人情報を保有する機関のセキュリティ対策の限界を知ることになりました。とりわけ、多様で大量の個人情報を保有し、それらの個人番号を附番することが求められている地方自治体のセキュリティ対策の点検は急務です。

マイナンバーが附番された個人情報を保護する措置の一つとして、特定個人情報保護評価が、マイナンバー法により設けられています。

しかし、この原則はすでにゆがめられ、全国の約半数の自治体では、システム改修を行う前には特定個人情報保護評価を行っておらず、改修後に行ったとされています。

国は、10月には個人番号付与通知を何が何でも出すことを優先し、個人情報保護のための手続きを後回ししてもよいとしているのです。

原則をゆがめる経過措置の存在に加えて、自治体が行う特定個人情報保護評価には、第三者機関によるチェックが制度化されていないという根本的な欠陥が存在します。

個人情報が多く付与されればされるほど、利用価値は増します。この情報を手に入れようとする力も強く働きます。サイバー攻撃を完全に防ぎきる手立ては不可能です。また、この情報に接することができる人に対した、情報を不正に流出することでお金にする誘惑も多くなります。ベネッセの情報流出は記憶に新しいことです。

堺市では今月68万件の情報が持ち出され、一部が流出する事件がおきたばかりです。

情報流出へのリスクへの懸念が解消されない中での、マイナンバー制度実施への前のめりの姿勢はとても危険です。したがって、国民にとってのメリットがほとんどない中、番号流出の危険や莫大な費用負担を強いるマイナンバー制度に関係する条例には賛成できません。

また、住民基本台帳カードのコンビニ活用についても、住民の個人情報漏えいのリスクは本質的には同じようにあるので、この条例も反対いたします。

 

議員各位の賛同を賜りますようにお願いして討論を終えます。

 

 



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