「4月から900人以上の保育の受け皿拡大」 確かに朗報だが、中身は問題だらけ?
市議団事務局(東田) 17年01月12日
岡山市の大森市長は今日(2017.1.12)、全国2番目の多さとなっている市の待機児童対策として、今年4月から919人の受入れ枠の拡大を実現できる見通しとなったことを発表しました。
また、保育園等に入園を希望する子どもの数(保育の量の見込み)について、2015年の1万6千403人をピークとして後は下がっていくとした現在の計画を見直すとして、2017年度に1万9千379人をピークと設定する、およそ3千人多く修正する案も発表しました。
今日の発表では、4月の入園希望数は一次段階で17011人。今回の919人の「受入れ枠」拡大を含めても受入れ総数は15493人で、1518人の子どもが入れないことになります。
今回の拡大で待機児童のすべてが解消できるわけではありませんが、保育園に入れずに苦労したりつらい思いをしたりしている親子にとって、ひとまずは朗報です。
また、市の計画の基になっている保育需要予測をアンケート調査に基づいて修正するとしたことも大切です。この指摘は党市議団もずっとしてきていたことで、評価できます。
一方で、「受入れ枠の拡大」の中身については、いくつかの問題点や疑問点があり、今回の発表を手放しで喜ぶことはできません。
ひとことで言えば、「質確保の保障がない、無責任な量的拡大」になっているのではないかということです。
今後、議会や常任委員会などの場で議論していくことになりますが、現時点で気になる点を挙げておきます。
1.「待機児童の解消」に正面から取り組んでいるのか?
そもそも、保育園に入れないから「待機児童」なのであって、企業主導型保育など保育園ではない「受け皿」を「待機児童の解消策」にするのは、おかしい。
2.緊急一時預かりの子どもだって「待機児童」
公立幼稚園の空き教室を活用した一時預かり事業も、認可保育園に入れないからやむを得ず緊急避難的、「一時」的に預かりを利用するのであって、「待機児童」でなくなったわけではない。保育園の確保なしには結局困る。
3.保育の質が心配な「受け皿」が含まれている。
事業所内保育や企業主導型保育は、制度上は「認可外保育施設」に分類され、保育士の配置や施設整備など、質がどこまで保障されるか心配。特に企業主導型保育は、市が補助金を出すわけではないので、監督も実際には極めて不十分。
4.人数のカウントにトリックがあるのでは?
「人数」にカウントしている事業所内の103人と企業主導型の102人という数は、両方とも総定員であり、そこの企業の従業員枠が50%以上あるため、実際に地域の児童が利用できるのは「人数」の半分以下。
5.小規模保育では3歳から「待機児童」
小規模保育で在園できるのは3歳まで。現在市内にある小規模保育施設のうち約半数では3歳からの行先が確保されておらず、結局、新たな「待機児童」となってしまう。
6.公立認定こども園は、待機児童の解消に全く役に立っていない。
メニューの中にそもそも入っていないということは、5つある公立認定こども園でただの1人も定員が増えていないということ。市がずっと言い続けてきた「待機児童解消のためにこども園化」はどうなっているのか、疑問。
7.保育士の確保策がない。
待機児童の解消には、施設整備(保育園などを増やすこと)と合わせて、保育士の確保とそのために処遇の改善も必要だと市もこれまで言っていたのに、今回、全く触れられていない。