【議会質問資料】 2017年6月議会 田中のぞみ個人質問(6/15)
市議団事務局(東田) 17年06月15日
1.地域協働学校とシニアスクールの可能性について
超高齢化社会を迎える中で、健康寿命の延伸は個人にとっても福祉行政にとっても大きな課題です。
岡輝中学校の地域協働学校の中から生まれたシニアスクールは、生涯学習の観点だけではなく、高齢者の生きがいづくり、認知症予防、介護予防などの面において、さまざまな可能性を持った取り組みとして、改めて注目されるべきだと思います。
シニアスクールの正式名称は「子どもたちと主に学ぶ教室シニアスクール」です。平成15年に岡輝中学校においてスタートし開校15年目を迎えています。荒れる中学校を克服する過程で、「世代を超えた心の交流」を狙いとして始まりました。
現在、岡輝中学校内に週3日の岡輝教室、清輝小学校に週2日の清輝教室、岡南小学校に週1日の岡南教室があります。それぞれ13人、16人、27人合わせて56人の生徒さんが在籍し、最高齢は93歳です。カリキュラムに沿って、1時間目から5時間目まで給食を挟んでしっかり授業をしています。遠足もあります。開校当初から15年一度も休まず来られている方もおられ、多くの生徒さんが継続を希望されるそうです。ご本人にとっても、いまや大切な生きがいになっていると感じました。
子ども達にとっても身近な存在で、教室に入りにくい子どもの居場所になったりと、双方向に相乗効果のある大変有意義な取り組みで、現在も全国からの視察が絶えません。
しかし、シニアスクールの運営は大変です。NPO法人を立ち上げ、NPO会費と寄付と授業料でやりくりしており、行政からの金銭的支援はゼロです。ちなみに、NPO設立時の初代理事長は当時の萩原市長です。現在、講師の先生方は約40人で事務局など総勢50人が関わっていますが、ほぼボランティア状態です。来年からは、授業料の値上げが迫られています。関係者の世代交代も大きな課題であり、このままでは存続の危機を迎えるのではないかとも心配されます。
(1)シニアスクールの意義について
ア 岡輝中学校区の取り組みについては、一昨年市長が訪問してくださり、先日は保健福祉局長が見学されたと伺いました。介護予防や認知症予防の観点からシニアスクールの可能性についてどのように感じられましたか。
イ 岡山ふれあいセンターでは、介護予防事業の一環としてシニアカレッジに取り組まれており好評と伺っています。シニアスクールは、子ども達と同じ校舎で一緒に学ぶ点において高齢者にとっても非常に貴重な機会となっています。高齢者福祉分野の岡山市の事業として、位置づけることはできませんか。
ウ 岡山市が配布している高齢者福祉の冊子でも紹介していただきたいがいかがでしょうか。
エ そもそも教育委員会では、HPや「教育振興基本計画」で、生涯学習としても地域協働学校の取り組みとしてもシニアスクールの位置付けがないのはなぜですか。岡輝中を参考に始めた鏡野町では、生涯学習として予算措置もあります。岡山市でもできないのですか。
(2)夜間中学について
昨年12月に成立した「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」において、全ての地方公共団体に、夜間中学における就学機会の提供等の措置を講ずることが義務づけられました。文科省は、まずは、全ての都道府県に少なくとも一つは夜間中学を設置する事を目指すという方針を示しています。
この5月全国夜間中学研究会の方々が岡輝中のシニアスクールを視察されました。シニアスクールは、学び直しの機会を提供しているすばらしい取り組みとのことでした。全国に誇るシニアスクールで、モデル試行ができるのではないですか。
(3)「地域の寺子屋」にとりくみませんか
岡輝中のシニアスクールでは10年ほど前から「岡輝版土曜寺子屋」として、シニアスクールの講師の先生方による寺子屋が開催されていました。残念ながらここ数年は休止状態です。様々な負担が原因と考えられます。
一方、神奈川県川崎市では、全小学校に「地域の寺子屋」を設置しました。子どもの貧困対策が急がれる中においても、身近な学校施設における「寺子屋」的学習支援は今後おおいに注目されるべき取り組みです。
家庭学習の重要性がよく訴えられますが、女性の就業率の向上と、家庭で子どもと向き合う時間の減少は相関していると思います。我が家も、長男が小学校に入学した途端に毎日の生活がめまぐるしく変わりました。小1ショックは家庭にもあります。毎日出される宿題と翌日のランドセル準備だけでも1年生だと小一時間かかってしまいます。夕方6時前に帰宅しても、夜9時に寝かせようと思えば、その時間はとれません。夕食の支度をして、食べさせて、妹達もお風呂に入れる。片付けや洗濯物を後回しにしても、家事を分担しても毎日は難しい。ひとり親ならなおさらです。葛藤しているお母さんは多いと思います。昔に比べ、授業数も宿題も増え、子どもも疲れてかわいそうに感じます。
地域の教育力も求められていますが、何ができるのか。放課後子ども教室などで、学習支援に取り組んでいる地域や、福祉部局による学習支援事業もありますが、教育委員会としてのお考えをお聞かせ下さい。
(4)地域協働学校の在り方について
文科省は、地域に企業や法人、NPO等あらゆる主体も巻き込んだ「地域学校協働本部」を置いて、推進を図ろうとしています。学校を舞台にした地域づくりとされていますが、教職員の負担が増えてしまっては本末転倒です。そもそも岡山市が2本柱としている「地域協働学校」との違いは何なのか。地域協働学校の学校運営協議会を拡大するのか、改めて整理するべきではないかと思います。方向性をお示し下さい。
2.待機児童対策について
(1)子ども・子育て支援計画について
子ども・子育て支援計画の見直し案が示され、保育事業と学童クラブについては、量の見込みと確保計画が大きく見直されました。数字の話は細かい話になりますが、計画自体が数字の話そのものであり、しっかり計画を立てることが全てのベースになります。
ア 希望する全て子どもが保育を受けられるよう市が施設を整備するのがこの支援計画です。H31年に19,000人分の施設数を確保する計画になっていますが、これは企業主導型保育事業や既存の認可外施設も含んだ施設整備計画ですか。
イ 昨年度の増員実績1,029は「利用定員」ですか。「認可定員」ですか。合わせて今年の目標値1、500についてもお示し下さい。国の集計に反映されるのはどちらですか。
ウ また、1,029のうち実際に利用されているのは何人で何割か、その理由はなんですが、認可と認可外についてお示しください。
エ 保育士が確保されない限り実際の受け入れは増えません。この度の計画見直しでも、0歳児と1歳~2歳児、3歳児以上で分けて量の見込みを立てています。必要な保育士の数は割り出せます。フルタイム換算で何人必要ですか。その数を確保する計画こそ必要ではないですか。
オ 保育士の離職防止観点から、「岡山市就学前教育・保育の在り方」で検討すると述べられていた事務専門の職員や、掃除洗濯専門など保育に携わらない職員確保についての検討状況はどうなっていますか。
カ 未入園児童へのアンケートを行ったということですが、目的と内容、結果についてお示しください。
(2)保育の質の確保について
子どもを預かってくれるならどこでもいいと保護者は決して思っていません。いくつもいくつも保育施設を見学して、どこなら我が子を大切に育ててくれるだろうと真剣に悩んでいます。市長が「あらゆる手段を使って」と繰り返される中で、就学前の保育・教育についてどこまで保障しようとしているのか、大きな不安を感じでいます。
昨年導入された、企業主導型保育事業については、今議会でも、市の税制優遇を最大限行う議案が示されており、積極的な参入を促したいメッセージを発信されています。しかし、企業主導型保育については、市町村が一切関与出来ず、利用調整等もできません。9日に開催された「子ども・子育て会議」において、企業主導型保育について委員から出た質問に対し、基本的には従業員向けで市が認可している事業所内保育と同じという旨の説明がありましたが、果たしてそうでしょうか。
先日ある企業主導型保育園を見学しました。全国展開されている株式会社の企業主導型保育です。園児募集の広告を見れば、「10分単位でご利用いただけます。」「当日予約OK」、「お得なプリペイドシステム」があり、「今なら年会費2000円オフ」。「月極コースも様々なコースからお選びいただけます。」などのうたい文句が並んでいます。
実際に、土日や祝日も開園しており、夜も夕食付きが選べるなど、一時預かり先としては便利さを感じます。生後2ヶ月から預けられる施設ですが、保育全体がシステム化されビジネス化されていると感じました。
担当者から「企業主導型保育事業なので、岡山市で保育認定をもらえば、少しお安くなります。」という説明がありました。従業員枠という設定は現在無いようでした。説明してくれたのは、他県から応援にきていたベテラン社員でしたが、保育士資格者について聞いても、具体的な返事はありませんでした。保育従事者ですが、保育士ではないと感じました。
ア 岡山市は、企業主導型保育事業を待機児童解消の受け皿として目標数の中に位置づけていますが、就学前教育・保育を保障する観点から、岡山市は責任を持てるのでしょうか。
イ 「岡山市就学前教育・保育の在り方」においては、「希望する全ての就学前の子どもに小中学校への連続性を大切にした教育・保育を等しく提供できるよう子育て環境を整備」するとあります。認可保育所以外の保育施設について具体的にどのように保障するのか、改めてお示し下さい。