【質問原稿】 2018年6月議会 田中のぞみ個人質問(2018.6.20)
市議団事務局(東田) 18年06月20日
※事前提出した版であり、実際の読み上げとは一部異なる場合があります。
1 保育環境の充実について
(1)未入園児と待機児童について
今年4月1日時点で、認可保育園に申し込んで入れなかった未入園児は、1447人いました。昨年から48人しか減っていません。一方待機児童は551人です。待機児童と未入園児の違いは何でしょうか。認可保育園に入りたくて入れない状況は改善していないというのが率直な市民の声です。
ア かつて岡山市は10年近く待機児童ゼロとし、500人~800人の保留児を抱えていました。見かけの待機児童をゼロとしたことが保育園整備の遅れを招いたことは否定出来ません。岡山市は、今年、待機児童の定義をさらに変えました。未入園児童のうち、特定の認可外施設に入所した101人を待機児童から外したのです。幼稚園の空き教室を活用した「緊急一時預かり」も含め、合わせて298人の認可外施設入所者が待機児童から外されています。宙に浮いてしまったこの方々は、今後も認可保育園を希望する可能性は高く、まさに待機児童です。
認可保育園に入りたい市民のニーズを曖昧にした「保留児」を再び作っていませんか。市長は就任後、保留児と待機児童の定義がわかりにくい、市民のニーズにそった施策が必要だとおっしゃいましたが、逆行していませんか。298人の検証も必要ではないですか。市長のご所見を伺います。
(2)市立保育園と幼稚園の民営化について
保健福祉委員会に、高島幼稚園と古都幼稚園の民営化に伴う事業者募集条件の概要が示されました。今後、多くの民営化対象の保育園・幼稚園があるため、質問します。
ア 市立幼稚園が保障してきた、希望者の全員受け入れは保障されますか。
イ 市立幼稚園が保障してきた、障害児の受け入れは保障されますか。
ウ 在園児がいる園で運営主体が変わるということはとても大きな変化で保護者の不安は計り知れません。保護者が保健福祉委員に持参された陳情を読んで改めて感じました。市長宛に要望書も出ていると聞きました。市長は読まれましたか。要望書の提出状況と対応についてお示し下さい。
エ 幼児教育無償化や3才児問題を前に、公立施設を30園に絞ることに対する市民の理解は進みません。今やるべき事は、2年後のニーズ変化を的確に把握し、早急な公立幼稚園の3才児受け入れと認可保育所整備に全力を注ぐべきではないでしょうか。
2 学校栄養士の役割と会計年度任用職員について
(1)栄養士の役割について
岡山市は、歴史的に学校給食の調理場ごとに1人の栄養職員(栄養士)を配置してきました。調理の民間委託が進む中で、むしろ、直営の栄養士がいるから、調理部分が民間委託されても質の担保が出来ると市は説明してきました。
しかし、今年度は栄養士の未配置校が11校あります。栄養士配置105人の欠員に必要な臨時栄養士が36人中11人配置できなかった。
岡山市教育委員会が4月13日に出した通知によると、その原因を「市費臨時栄養士の負担が大きく、その業務内容と賃金など勤務労働条件が見合っておらず当職への申し込みが少ない」と分析され、対策として、市費臨時栄養士の業務を縮小し、他校の栄養教諭に兼務させる方法を採りました。市費臨時栄養士の学校には週に1日、栄養士未配置の学校には週に2日、栄養教諭が出張してくるわけですが、とうてい業務がこなせない、残量調査や児童の給食委員会・授業を通した食育の後退、栄養士不在中の食物アレルギー対応が不安、学校が大変といった声をききました。
岡山市は18年間市費正規の栄養士の採用を行ってきませんでした。
ア 栄養士が果たしてきた役割についてどう評価していますか。
イ 栄養士未配置の学校では、栄養士の仕事が学校と調理員に振り分けられています。学校の場合、主食・牛乳の発注、緊急時の発注変更、調理員の健康観察管理、検便受検確認、調理員代員確保補助、給食指導、などが増えています。学校教員の多忙化を増長していませんか。
ウ 市費の臨時栄養士職に応募が無いのは、同じ資格者でありながら低い処遇だからであり、負担軽減として食育やアレルギー対応を職務から外すことは、やりがいや人材育成につながらず逆効果です。なぜ、正規栄養士の採用を行わないのですか。
(2)会計年度任用職員について
2020年4月から会計年度任用職員制度が導入されます。非正規職員が1年単位の雇用に厳格化されます。岡山市には、栄養士以外にも、司書、保育士、公民館職員、相談員など資格や専門性が求められる職種に多くの非正規職員がいます。1年の細切れ雇用に限定されることは、市民サービスの大幅後退につながる大問題だと考えます。
一方で、総務省通知によれば、「常勤職員が行うべき業務に従事する職が存在する事が明らかになった場合」には、常勤職員や任期付き職員を検討することとされています。
ア つまり「相当の期間任用される職員を就けるべき業務」の場合には、会計年度任用職員はあたれない、という認識でよいでしょうか。
イ 今後、全ての非正規職員について方針を決定していかなければならず、これから担当課ヒアリング等が始まると聞いていますが、全体のスケジュールをお示しください。経過措置の有無についてもお示しください。
学校司書を例に質問します。岡山市には小中学校で128人の学校司書がいますが、そのうち96人は非正規の嘱託職員です。この96人は、パートタイムの会計年度任用職員に移行となる可能性があります。
岡山市は、これまで全小中学校1校に1人の学校司書を配置してきました。
その成果は大きく、岡山市の子どもの年間貸出数の小学生の平均は1人約96.2冊で、県内の他自治体で3校を1人の非正規司書が兼務している学校の倍以上です。図書館を使った授業は年間700時間を超える学校もあると聞いています。全国学力学習調査では、読書が好きと答えた割合は、全国平均をはるか上回っています。
TVやゲームやスマホに囲まれ、読書の習慣を身につけることは非常に難しいと感じている保護者の一人として、小学3年の長男が持ち帰る図書館からの便りは、親子読書のスタンプラリーや、新刊紹介や、一冊サービスチケットなど、図書館に足を向ける様々な工夫を感じています。さらに、9割近い学校で、図書館が不登校児童生徒の居場所となっている事例と聞きました。
いずれも、学校司書が常に図書館を開け、蔵書を管理し、職員会議に出て、教師と打ち合わせをし、子どもたちの知的好奇心を掻き立てる工夫を凝らしてきたからこそだと確信します。
学校司書が、1年単位のパートタイム雇用になってしまえば、職業として不安定で専門的な人材は集まらなくなり、前段の栄養士のように兼務校が増えることも想像に難くありません。子どもたちへのマイナス影響は大きいと危惧します。
ウ 学校司書が果たしてきた役割とその成果について具体的にお示し下さい。
エ 市長にお伺いします。岡山市の子ども達にとって、学校図書館の役割は、今後さらに発展させることこそ望まれるのであって、国も2014年に学校図書館法を改正し、新たに学校司書の配置努力を明記しました。ハコだけでは機能しないということです。その後「学校司書の職務の内容が専門的知識及び技能を必要とするものであることから、継続的な勤務に基づく知識や経験の蓄積が求められる」と「学校図書館の整備充実について」で通知を出しています。先進地岡山は、全国からの視察も絶えません。多忙化する教員を専門的・質的に支える存在でもあります。学校司書は正規で配置するべきだと考えますが、ご所見をお聞かせください。
3 岡山市人権教育及び人権啓発に関する基本計画の改訂について
岡山市人権教育及び人権啓発に関する基本計画の改訂の素案が示されています。平成14年に策定された後、16年経って初めての改訂です。今回、分野別施策として「犯罪被害者等」「性的マイノリティ」「インターネット上のいじめなどの問題」「災害に伴う人権問題」などが新たに項立てされました。
通常、計画の改訂に当たっては、現状の分析をしっかり行い、課題を的確に把握することが必須です。ところが、この素案で頻繁に根拠とされる市民意識調査はH25年度実施のものです。5年ごとに行われている人権問題に関する市民意識調査は、今年度9月頃にも実施予定です。
ア 5年経てば市民の人権意識も変化します。最新の市民意識調査に基づいて計画を策定しませんか。しない場合は、その理由をお示し下さい。
次に、分野別施策の5番目に位置づけられている同和問題について質問します。同和問題は、ここに掲げられている他の様々な人権課題と質が違うと思うからです。
部落問題は、一部の人びとが、歴史的に住む場所や、職業や結婚の自由を奪われ、近代社会においてもなお不当な人権侵害を受けてきたという問題です。戦後、日本国憲法の基本的人権を確立する運動や行政施策、特に昭和44年制定の特別措置法が廃止されるまでの33年間に、生活環境など大きく改善されてきたことは素案にあるとおりです。
現在、同和地区は存在しません。人口の流入・流出は格段に進み、特別対策で建てられた市営住宅も一般公募とされて久しく、特別扱いは一切ありません。入居者の家族に居住権利を世襲することが出来ないのは全ての市民に共通です。つまり、主に居住地によって差別の対象となっていた部落問題は、今や差別をうける対象としての人物を特定すること自体が出来ないわけで、この点において、他の人権問題と大きく違います。
現在残っているのは、ごく一部の人たちの間で、「特別対策」などが今も残っているとの誤解や、かつての「地域」へのイメージなどが複合的に現れる「わだかまり」・「こだわり」の問題ではないでしょうか。インターネットの書き込みも主にこのテーマです。これは差別でしょうか。人権侵害でしょうか。
今もなお差別が残っていると主張する人々が根拠にするのが、前出の市民意識調査です。ひどい内容です。「あなたのお子さんが結婚しようとする相手が、旧同和地区の出身の人であることが分かった場合どうしますか」また、「あなたが旧同和地区の出身の人と結婚しようとした時、親族から反対されたらどうしますか」という質問で、反対する、結婚をあきらめるという人が一定いる事を差別の根拠として挙げます。まさに新たな人権侵害です。
イ 障害者やハンセン病や性的マイノリティや外国籍の人など、他の人権問題で同様の質問をしますか。
ウ 結婚問題は、ほぼ全ての人権課題に存在すると言っても過言ではありません。部落問題固有という認識ですか。結婚に反対するという市民がゼロになる事が差別解消の指標ですか。
エ 特に部落問題の場合、質問自体が、結婚相手やその親族がかつてどこに住んでいたのか調べよう、という間違った認識を与えませんか。
オ そもそも旧同和地区とはどこかという質問に答えられますか。
カ 人権問題に関する市民意識調査は、内心の自由を侵すものであってはなりません。内容は慎重に再考されるべきではありませんか。
同和問題が他の人権課題と決定的に違う点は、固有の地域と密着していた人権課題だからこそ、物理的な較差が解消された段階で対策を続けること自体が差別を固定化するという点なのです。平成28年に新法が制定されましたが、付帯決議をみれば「新たな差別を生む」懸念を認めざるを得なかった事が分かります。
キ だからこそ、岡山市が素案で「重要な人権課題」と位置づけ「差別意識の解消」を挙げる以上、具体的に誰を対象にした何を指しているのか、どうなれば解消したと言えるのか、を明確に示す責任があります。お示し下さい。
ク 2002年に一連の特別措置法が終了した際、その理由として総務省が挙げた3つの理由をお示し下さい。
ケ 改めて、同和問題については、分野別施策は不要であると思いますが、ご所見を。