市議団事務局(東田) 16年06月17日
160617 林潤個人質問(原稿)
(質問 全文)
1.前期中期計画について
岡山市は岡山市長期構想の前期5カ年の具体的政策を定める前期中期計画を策定しようとしていて、6月2日には基本政策審議会が開かれ「前期中期計画策定の基本的な考え方について(案)」が示されました。
前期中期計画については、30の政策と90の施策からなる分野別計画と区別計画が示されています。
そのうち、今回は平和と教育の分野に絞っておたずねします。
教育分野では、教育振興基本計画は市の総合計画の教育部分の詳細版として位置づけられており、総合計画策定にあわせて計画期間が変更されました。
また地方教育行政法の改正に伴い、市長が主宰する総合教育会議が置かれ、市長が教育大綱を策定することになっています。総合計画の前期中期計画中の教育部分も大綱も市長が策定し、教育振興基本計画は教育委員会で議論することになります。関連を明確にしておきたいと思います。
そこで質問します。
(ア)分野別計画では、平和が人権政策の1項目に含まれています。独立した項目を立てるべきではありませんか。
(イ)中期計画の教育分野と教育振興基本計画、教育大綱の関係はどうなりますか。
(ウ)教育大綱と教育振興基本計画の策定はどのようなスケジュールになりますか。
(エ)平成29(2017)年度に県費教職員の財源が市に移譲されてから教職員の独自配置は行いますか。特に特別支援学級において、個に応じたきめ細やかな指導・支援及び合理的配慮をこれまで以上に充実していくためには、学年別に学級が編成できるだけの教員配置が必要ではありませんか。
2.市民会館と福祉文化会館について
市は、千日前の再開発地区への市民会館の移転について5月末までに地権者の同意100%を求めるとしていました。
しかし86%の段階で「最終的には全ての賛成が得られる」として新しい文化芸術施設を千日前に建設することを決定しました。
2021年度中の完成という期限が括られているために、権利変換などを間に合わせるために5月末に同意100%を求めていたと理解していましたが、100%でなくても千日前に決定というのでは期限の意味が分からなくなりました。
3分の2の同意があれば残りは法的手段を取ることができるので、同意率が100%にならなくても再開発が可能なことは以前から分かっていたことです。それをあえて100%の同意を求めて決定を5月末以降に延ばしていました。法的手段を取らなければならない状況では余計に時間が掛かることが考えられます。
再開発は組合が行うものですが、市の重要施設が入ることが前提で建物の計画にも関与しています。期限も市が求めています。再開発を進めるにあたって再開発組合任せでは問題があります。
新しい文化芸術施設は必要なものでよいものを作ってほしいと思います。だからこそ市民、関係者の理解を得て進めなくてはなりません。
新しい文化芸術施設の完成に合わせて廃止される予定の福祉文化会館についても質問します。
福祉文化会館には障害者団体が事務所を置いています。福祉文化会館が廃止される際には移転先が必要になります。
移転するにあたっては、交通の便や駐車場はもちろん、どこかのビルに入れることになっても高層階だと災害時にエレベーターが止まったら避難が難しい、との不安もお聞きしています。
体の不自由な方の利用に配慮が必要だと考えます。
そこで質問します。
(ア)100%の同意が得られるとの見込みは市が直接、地権者に確認していますか。
(イ)同意していない地権者の理由を確認していますか。
(ウ)5月末まで決定を延ばした意味はなかったのではありませんか。
(エ)法的手段を取ることになればどの程度、日数が必要ですか。
(オ)現時点での地権者の同意と個別の補償交渉の成立は別です。補償交渉の日数はどのくらいを見込んでいますか。
(カ)同意を得るのに手間取ると補償費用が嵩んで市民会館の建設費に影響する可能性はありませんか。
(キ)今年度末で市民会館の指定管理の期間が終了したら、2022年に新市民会館が開館するまで市民会館がない状態になりますか。
(ク)天神山の後楽館高校跡地は市有施設として活用しますか。
(ケ)福祉文化会館に事務所を置いている団体の移転先はどうなりますか。駐車場の確保はできますか。
3.ヘイトスピーチを許さない岡山市に
「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」いわゆるヘイトスピーチ解消法が成立し、6月3日に施行されました。
法の成立は、全国で在日コリアンに対する差別的言動、ヘイトスピーチが問題になり、ヘイトスピーチは許されない、という運動を受けたものです。
法案審議の中で日本共産党の仁比そうへい参議院議員は、与党案の提出は「ヘイトスピーチによる被害の深刻さと、その根絶を求める当事者、国民の声に迫られたからに他ならない」と強調しました。一方で同法案には、ヘイトスピーチ被害の対象を「適法に居住する」「本邦外出身者」とする骨格であり、人種や民族を理由とする差別は許されないという憲法と人種差別撤廃条約の趣旨をあいまいにしている「不当な差別的言動」との用語が明確性を欠く、ヘイトスピーチの違法性が明確でない―などの問題があると指摘しました。こうした議論を経てヘイトスピーチ解消法が成立しました。日本共産党の参議院選挙の公約にはヘイトスピーチの根絶が盛り込まれています。
不十分や問題点の指摘はあるものの、日本は1979年に自由人権規約に、1995年に人種差別撤廃条約に加盟しながら、人種差別に対応する法整備をしてこなかったことからすればヘイトスピーチ解消法の成立は前進です。
3月末に法務省がヘイトスピーチをしていると指摘されている団体のデモや街宣活動を調査した結果が報じられています。
3年半で1152件が確認されています。デモの多くは拉致問題など政治的主張を掲げて行われており、法務省は「実際の言動と必ずしも一致していないことに留意する必要がある」としています。
政治課題を掲げて外国人差別をするのは、言うなれば政治問題の差別利用です。拉致問題を隠れ蓑にヘイトスピーチを行うことは、真剣に問題解決に取り組んでいる人たちにも大迷惑です。
ヘイトスピーチはよその問題ではなく、岡山市でも4月17日に拉致被害者奪還を掲げたデモと街頭宣伝が行われました。
在日特権を許さない市民の会からの参加者がマイクを握り、民族名を連呼して「帰れ」と叫び、在日コリアンを貶めるヘイトスピーチが行われてしまいました。
また民族差別のヘイトスピーチには該当しませんが、特定の個人や議員を罵倒し、外見や年齢をあげつらう品性に欠ける言動が溢れていました。現場で聞き取り、動画を視聴し内容を書き出したものの、読み上げるのも憚られます。
しかし岡山の市民も黙認していたわけではなく、多くの人が自主的に集まり抗議の意思表示をしました。
このデモは、主催者が「岡山での活動に参加されたほとんどの方は遠方から多額の交通費を払って来てくれてる人」とツイートしました。
「岡山ではヘイトスピーチが許されるだろう」と考えてやって来た人がいたとしたら、間違いだったと気付いたと思いますが「今後も許されない」ということを市として明確にすべきだと思います。
法の成立よりも先に大阪市では「大阪市ヘイトスピーチの対処に関する条例」が定められ、法成立と前後して川崎市では差別主義者による市有施設の使用が不許可になりました。
表現の自由との関係で慎重な判断が必要なことで厳密な運用が求められますが、行政として民族差別を許さない姿勢を明確にしていることは重要な意味があります。
そこで質問です。
(ア)市長はヘイトスピーチについてどのような認識をお持ちですか。市が掲げる多文化共生とは相容れないのではありませんか。
(イ)ヘイトスピーチ解消法はどのような主旨で制定されていますか。
(ウ)4月17日に行われた「拉致被害者奪還」を掲げたデモはヘイトスピーチに当たるのではありませんか。
(エ)市としてヘイトスピーチを許さない宣言をしてはどうですか。
(オ)市有施設がヘイトスピーチに使用されないように手立てを取ることができますか。
(カ)ヘイトスピーチ解消法を市行政にどう反映させますか。